REVIEW
本作は、ニューヨークの片隅でひっそりと懸命に生きる人達の物語です。母のラファエラ、息子のポールとティトのデュラン一家は、ペルーからニューヨークに移住した不法滞在者です。ラファエラはウエイトレスをし、息子2人も配達の仕事をしながら語学学校に通い、慎ましい生活をしています。そんなデュラン一家に訪れた出会いが、大きな変化をもたらします。
大都市ニューヨークで“透明人間”のように扱われるポールとティトが、“居場所”を求める気持ちや、1人の美少女クリスティンとの出会いを通して、一層自分達の存在感について考える背景には、思春期という年頃だけではなく、人種問題や格差社会の問題も見えて、殺伐としたジャングルのようなニューヨークの一面が描かれています。それは、クリスティンの現実や、ラファエラの奮闘を観ても、同じことがいえます。彼女、彼等の姿から、科学技術などによって文明はかなり進化しているように見えて、考え方は進化していない一部の人間の犠牲になる人々がいる現実は変わらないことを実感します。それが、大都市ニューヨークだからこそハッキリを見えることにも気づかされます。
そして、本作には一人前の男になりたいポールとティトの気持ちと、時と場合により女として見られることが苦痛なクリスティンの気持ちの両方が描かれている点も印象的です。ネタバレになるので具体的には書きませんが、メインキャラクター達が社会から受ける理不尽な出来事だけではなく、若者同士のやり取りにも残酷な面が描かれているように私は感じました。本人達に悪意はなく、各々が置かれた複雑な状況も絡んでしまうからこそ余計に切なくて、人間関係がある以上は避けられないことだからこそ辛辣に感じます。明るく前向きな面も描かれつつ、そんな現実を突きつけている点こそ本作の魅力ではないでしょうか。
デート向き映画判定
正直なところ、キービジュアルやキャッチコピーのイメージとは少し異なる内容に感じる方もいるかもしれません。確かに恋愛の清々しいキラキラも描かれてはいるものの、かなりシビアな現実も描かれていて、デートで観るには少し気まずいシーンも出てきます。カップルで行くよりも、仲の良い友達と観るか、じっくり1人で観るほうが良いのではと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定
ティーンの皆さんは、ポールとティトやクリスティンと等身大の目線で観られる部分がありそうです。前半は朗らかムードが流れつつ、クライマックスでは、かなり大きな出来事が起こります。世の大人達のずるさ、汚さも観ることができるので、ある種の社会見学のつもりで観るのも良いかもしれません。
『ニューヨーク・オールド・アパートメント』
2024年1月12日より全国公開
百道浜ピクチャーズ
公式サイト
© 2020 – Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue
TEXT by Myson
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情報は2024年1月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。