今作も相変わらず、我が道をゆくスタイルで、キム・ギドク節が炸裂。ツッコミどころは満載ですが、意図するところがあっての演出だということがわかると違和感は軽減されます(笑)。そして、その意図を考えながら観るのがキム・ギドク監督作品の醍醐味です。今作の物語の舞台は船上で、あることをきっかけに船は孤立無援の状態になり、追い込まれた人間達が狂気に陥っていきます。人間の欲望、本能、本性がどんどん露わになっていくなか、「人間の尊厳はどこまで保てるのだろう?」「人間の本能はどこまで暴走するのだろう?」という両極の問いが同時進行していきます。今作も物議を醸す内容で哲学的であると同時に、もうぶっ飛び過ぎていて怖がったほうが良いのか、笑っちゃっても良いのか、とにかく感情が忙しく動かされる作品になっています。今回、キム・ギドク監督にインタビューさせて頂いたので、鑑賞前か後にお読み頂ければ、背景や監督の意図などがより一層わかると思います。そして、チャン・グンソクがこれまでのイメージを覆すキャラクターを演じている点や、アン・ソンギ、イ・ソンジェ、リュ・スンボムなど実力派俳優の怪演も見ものですよ。
とんでもないシーンが続々と出てくるので、デートでは観ないほうが良さそうです(苦笑)。そして、女性には特に辛いシーンが複数あります。もし女性がチャン・グンソクが好きだとしても、この映画はいつも観ているチャン・グンソクではないので、その点でも誘う時に要注意です。2人ともキム・ギドク監督作が好きなら、期待通りに楽しめると思うので観てみてください。
18歳未満の人は観られません。18歳以上でも、あまり内容を知らずに観るといろいろとビックリすると思います。激しい描写が苦手な人は、たくさんいろいろな映画を観て、免疫がついてから観るほうが良いでしょうし、キム・ギドク監督作ってこういう感じなんだとわかってから観るほうが理解が深まるでしょう。逆にこの作品からキム・ギドク監督作にチャレンジする人は、本作を観てから過去作を観ると、キム・ギドク監督作のスタイルなどがわかってくるので、ぜひ他の作品も観てみてください。
『人間の時間』
2020年3月20日より全国順次公開
R-18+
太秦
公式サイト
© 2018 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
TEXT by Myson