前半は手紙のやり取りに仕掛けられた、“ズレたやり取り”のおもしろさに引き込まれます。後半は雰囲気がガラッと変わって、シリアスでヘビーなテーマが取り上げられますが、手紙を通して真相が明かされることで救われていく人々の姿に最終的には心が温まります。どんな運命をたどるべきだったのか、選択を誤ったかどうかは、いつの段階で気付けるのかわかりません。もしかしたら、気付かないまま生きていることもあるでしょう。でも、そんななかで誰かの優しさが本人が意図しないところでもずっと心の支えになっていることもあるんだなと、人の繋がりの大切さを実感させてくれるストーリーです。どこに焦点を当てて観るかによって、ポジティブにもネガティブにも受け取れる内容ですが、そこが本作の深さなのだと思います。また岩井俊二ワールドとして、期待通りにロマンチックなセリフやシーンが堪能できます。岩井俊二監督作ということで音楽担当はもちろん小林武史。キャストは、松たか子、広瀬すず、福山雅治、豊川悦司、神木隆之介など豪華で、手堅い作品になっています。
一方通行な恋と両思い、両方が描かれていて、いろいろな立場で観られるストーリーです。友達以上恋人未満で、自分が恋愛対象として見られているのか、相手には別の人がいるのか…等が気になって前に進めない人は、敢えて好きな人を誘って、それとなく自分達の状況を確認する会話を切り出してみるのもありかも知れません。
手紙の魅力を感じるストーリーです。今はLINEなどで連絡を取ることが主流になっていますが、郵便で手紙を送るやり取りも良いなと思えるはずです。仲の良い友達や、好きな人と手紙のやり取りをやってみるきっかけにしてもおもしろそうです。親子、姉妹のストーリーでもあるので、家族と観に行くのも良いでしょう。
『ラストレター』
2020年1月17日より全国公開
東宝
公式サイト
TEXT by Myson
© 2020「ラストレター」製作委員会