日本史に苦手意識がありつつ、戦国武将の物語はいろいろ観てきたなかで、本作で初めて織田信長に魅力を感じた気がします。あくまで私個人の印象ですが、これまでの戦国武将の物語は戦や政治的な駆け引きが中心に描かれているのに対して、本作は戦や政治的な駆け引きは描かれているものの、織田信長と正妻の濃姫のプライベートな場面が多く、彼の人となりがさまざまな角度から観られるからこそ、織田信長の魅力が見えやすくなっているのだと思います。同時に、濃姫というキャラクターがいることによって、彼を人生のパートナーとして観る視点ができ、親近感を持って観られます。濃姫自身も野心家でありつつ、奥ゆかしいところが魅力です。彼女は古風な面と現代的な面を合わせ持つキャラクターで、今の時代の私達でも身近に感じるヒロインとなっています。また、宮沢氷魚が演じる明智光秀も多面性を持っていて印象的です。前述したように、正直なところ私は日本史が苦手なので、史実やあらゆる学説と照らし合わせて観るほどの知識がない分、素直に本作は本作として観られたのかもしれません。ぜひ、歴史に詳しい方の感想も聞きたいところではあります。
そして、今回は木村拓哉がすごくかっこ良く見えました(笑)。年齢を重ねたからこそ出てきた味も良い感じで出ているのではないでしょうか。逆に、10代のくだりはちょっと貫禄があり過ぎて、私は2人が何歳の設定なのかがわからないまま観てしまったので、これからご覧になる皆さんは、最初に登場する織田信長は16歳、濃姫は15歳であるということを念頭に入れて観てください。2人の30年間を描いている点で、夫婦の物語としても見応えがあります。時代劇は苦手ですという方でも観やすい作品で、ラストはちょっと洋画的でもあります。あらゆる先入観を抜きに観てみてはいかがでしょうか。
思った以上にラブストーリーといえるので、デートで観るのもオススメです。友達以上恋人未満の2人や、お互いに素直になれない時に観ると、距離を縮めるきっかけをもらえるかもしれません。夫婦の物語としても観ながら考えさせられるところがあるので、本作で自分達のパートナーシップを客観視するのも良さそうです。
ちょうど日本史を勉強している皆さんは、映画などで歴史上の人物を観ると興味が一層湧くのではないでしょうか。織田信長や周囲の人物に興味をもったら、史実ではどういう関係にあったのかなど調べていくと知識は増えて、一石二鳥ですね。3時間弱の長さなので集中力が必要ですが、織田信長と濃姫が生きた30年間をテンポ良くギュッと凝縮して描いているので、それほど長さを感じないと思います。
『レジェンド&バタフライ』
2023年1月27日より全国公開
PG-12
東映
公式サイト
©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
TEXT by Myson