本作は、日本の介護問題に鋭く切り込んだ葉真中顕の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』の前田哲監督が映画化した作品です。ある民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見され、介護士の斯波宗典 (松山ケンイチ)が逮捕されます。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が勤める訪問介護施設のある不審な点に気づき、真実を突き止めようとします。
斯波は、一見とても真面目で優しく、他の職員からも慕われています。もし彼が側にいたとしても決して殺人犯には見えないと思います。でも、物語が進むにつれて衝撃の事実が明らかになります。詳細は控えますが、本作の1番の見どころは斯波と大友のそれぞれの正義がぶつかり合う点です。物語からは介護の闇も垣間見え、観ている側も昨今の介護問題と照らし合わせながら観ることができます。また、さまざまな介護問題を抱える人物が登場するので、観る方の状況によって感情移入するキャラクターが変わると思います。
主人公を演じた松山ケンイチ、長澤まさみをはじめ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、柄本明らが共演していて、それぞれの名演が光っています。特に斯波と大友が対峙するシーンはものすごく緊張感が伝わってきて、見応えがあります。現代の社会問題と通ずる点がたくさんありつつ、ミステリーとしても楽しめる作品で、介護経験の有無や年齢問わず多くの方に観て欲しい1作です。
恋愛要素はなく、介護問題にまつわる物語なので、付き合いの長いカップル向けの作品です。事件を推理しながら観ても楽しめるので、鑑賞後に一緒に感想を話すと盛り上がりそうです。また、本作では親の介護の大変さも描かれているので、これを機に親の介護や、自分達の老後について一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
皆さんの場合は介護とまだまだ疎遠な方が多いと思います。でも、人気俳優が出演しているという点や、事件の真相に迫るミステリー要素は皆さんも興味深く観られるのではないでしょうか。本作を観ることで、普段ニュースなどで報道されている介護問題についてもよりリアルに感じると思います。
『ロストケア』
2023年3月24日より全国公開
日活、東京テアトル
公式サイト
©2023「ロストケア」製作委員会
TEXT by Shamy
- イイ俳優セレクション/柄本明
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