19世紀末から20世紀にかけてイギリスで人気を博し、数々の猫の絵を発表した画家、ルイス・ウェインの人生を描いた本作。イギリスの上流階級に生まれ、イラストレーターとして活躍していたルイス(ベネディクト・カンバーバッチ)は、ある日家庭教師のエミリー(クレア・フォイ)と出会います。その後の展開は本編をご覧いただくとして、本作ではルイスとエミリーの身分違いの恋愛や、猫画家になったきっかけ、さらに家族関係が描かれています。ロマンチックな展開にキュンとする場面もあれば、悲しい出来事が起こる場面もあります。でも、そんなルイスの山あり谷ありの人生こそが絵にものすごく影響を与えていると感じます。
当時のイギリスでは猫をペットとして飼うという概念がなく、むしろ猫は不吉な存在として恐れられ、単なるネズミの退治役として扱われていたそうです。本作ではそんな時代に、ルイスが猫の絵を発表したことをきっかけに猫のペットブームが訪れたことも描かれています。猫をペットとして飼うことが当たり前の現代からは想像できないことが描かれているので、驚く方も多いと思います。また、ルイスの描く猫は、どれもとても生き生きとしていて可愛いので、画を見たことがない方はぜひ調べてご覧ください。
天才だけどとても繊細なルイスを演じたベネディクト・カンバーバッチの名演も見逃せません。そして、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズらが脇を支えていて、それぞれキーパーソンとして登場します。ルイスはとても感受性豊かな人物で、彼の抱いている苦悩には共感できる部分もあります。個人的にはエミリーとのある会話のシーンがとても心に残りました。美術好き、猫好きの方はもちろん、忙しく日々を過ごしている方や、悩みを抱えている方にも何か心に響くものがある作品です。
気まずいシーンがないのでデートにもオススメです。本作には、ルイスとエミリーとの恋愛模様も描かれています。ルイスがエミリーをある場所へ誘う時の態度はとても初々しく、恋愛初心者の方なら共感できると思います。また、ルイスがエミリーを純粋に想う気持ちからは、愛の素晴らしさも感じられ、お互いの関係を振り返るきっかけにもなりそうです。
純粋にルイスの人生に注目して観ても良いですし、美術の勉強の一貫としても観られる作品です。鑑賞前にルイス・ウェインの絵を調べて見ておくと「この絵を描いた人はどんな人なんだろう?」と、本作により興味を持てるはずです。そして、映画を観てルイスの人生を知った後にもう一度絵を見ると、最初とは違う感覚が得られると思います。
『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』
2022年12月1日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト
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TEXT by Shamy