本作の主人公は元ポルノ俳優のマイキー(サイモン・レックス)。彼は、一度はポルノスターとして輝かしい経歴を築いたものの、落ちぶれて故郷のテキサスへ舞い戻ります。彼は妻のレクシーに強く拒絶されながらも強引に転がり込み、妻と義母と共に暮らし始め、つてを頼ってマリファナを売りコツコツとお金を貯めていきます。
本作では、そんな彼の日常が描かれていくわけですが、このマイキーという男が何とも胡散臭い(笑)。彼は登場するなりウザいムードを出しまくるわ、可愛い女の子を見つけて露骨に反応するわで、わかりやす過ぎてめちゃくちゃおもしろいです。彼はめちゃくちゃ自己チューで、ここまで貫かれると逆に観ていて気持ちいい。絶対現実には出会いたくない男なのに、ショーン・ベイカー監督が描くと、どんな主人公も愛らしく見えるから、まさにマジックです。そして、周囲のキャラクターも濃い人ばかり。マイキーの自慢話は普通なら流されそうなものですが、本気なのかあしらってるのか不明ながら、それなりにマイキーをリスペクトしている周囲のキャラクターの姿がまた滑稽です。
とことん「なんでやねん!」とツッコミたくなるポイントを作ってくれているショーン・ベイカー監督のユーモアのセンスは、やっぱり素晴らしい!そして、クライマックスのとあるシーンでは、カメラワークの効果が絶妙で爆笑しました。まさに観客の気持ちを代弁していて爽快です。薄っぺらすぎる男マイキーを演じたサイモン・レックス、ドーナツ店のアルバイト店員ストロベリーを演じたスザンナ・サンの演技も見事です。2人とも「この人達、何やってんだか!」と思いながら嫌いになれないキャラクターとなっています。どこから湧いてくるのかわからない、マイキーの自信満々な姿、どうしようもない状況にいるのになぜか無敵感のある姿を観ると、何だか元気が湧いてきます(笑)。ショーン・ベイカー監督作を象徴する、太陽が照りつけるコントラストの効いた美しいシーンも健在です。マイキーのいい加減ぶりは腹立たしいを通り越して笑えるので、少し自分を追い詰め気味な真面目な方こそ、本作を観て肩の力を抜いてください。
男女関係もごちゃごちゃするし、ヌードや濡れ場もふんだんなので、デートには向きません。主人公のマイキーがどうしようもないヒモ男なので、交際相手が似たような状況の場合は自分の気持ちを客観視するきっかけにできるでしょう。意味不明な程にナルシストな人、自己チューな人と交際している方は愚痴りたくなると思うので、聞いてくれる友達を誘ってはどうでしょうか。
18歳になれば観られるとはいえ、生々しい性描写やセリフが複数あるので、そういうお話だと知らずに観るとちょっとビックリするかもしれません。元ポルノ俳優が主人公というところで、察しはつきますかね(笑)。逆に開けっぴろげに表現されているので、それほどいやらしく感じません。ただどこでどう気まずいと感じるかは個人差があるので、仲の良い友達と観るか、1人で観るほうが気楽だと思います。
『レッド・ロケット』
2023年4月21日より全国順次公開
R-18+
トランスフォーマー
公式サイト
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TEXT by Myson