主人公ロニートとエスティが抱える問題は、単に同性愛というだけではなく、ユダヤ教への信仰と家族の問題が絡んでくるというところでより複雑です。最初はロニートとエスティが今どうしているかという状況が映し出され、それは過去に彼女達がそれぞれに一旦決意した結果だということがわかります。でも、あることがきっかけで再会したことで、それぞれに抑えてきたものがわき上がってきます。そうした2人の大きな心境の変化が描かれると同時に、宗教のこと、地域のコミュニティのことなどが、徐々に明らかにされていき、2人が望む人生が容易ではないことがわかっていきます。ロニートは我が道をゆくという現代的な女性、エスティは与えられた状況のなかで生きていく古風な女性といったイメージですが、それぞれに犠牲にしてきたものがあるという点で、女性なら特にどちらにも共感できるポイントがあります。ネタバレを避けるために詳細は書きませんが、性的な繋がり、性生活での満足がいかに人生において大切かという点も伝わってきます。それは、かなり濃厚に描かれているロニートとエスティのラブシーンに象徴されていて、レイチェル・ワイズ、レイチェル・マクアダムスの二大実力派女優の演技も見ものです。
本作は原作者のナオミ・オルダーマンの自伝的小説です。恋愛だけでなく、生き方に重きを置いたストーリーなので、どの価値観を優先して良いかわからずに悩んでいる女子にオススメです。
女性同士のカップルなら、自分達に置きかえて観ることができそうですが、男女のカップルの場合は少し気まずい部分もあります。また主人公2人のラブシーンが濃厚なので、初デートや初映画デートでは緊張してしまうかも知れません。ただ、一緒に人生を共にするということがどういうことなのか、女性同士のカップルでも男女のカップルでも考えさせられるところがあるので、映画を一緒に観慣れているカップルは観てみてください。
宗教とジェンダーの問題がテーマなので、キッズにはまだ難しいでしょう。PG-12なので、観るとしたら大人と一緒に観ることになりますが、あらゆる点で親子で観ると気まずかったり、複雑な心境になる部分もありそうなので、自分である程度理解できる年齢になってから観ることをオススメします。社会的に難しい生き方を選択するとしたら、どんな覚悟が必要で、周りにどんな影響があるのかなどシミュレーションできるストーリーでもあるので、中学生以上のティーンの皆さんは興味があったら観てみてください。
『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』
2020年2月7日より全国公開
PG-12
ファントム・フィルム
公式サイト
TEXT by Myson
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