REVIEW

流麻溝十五号【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)

REVIEW

本作の原作は、曹欽榮(ツァオ・シンロン)と鄭南榕基金会による「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」です。映画公式資料によると、原作は1950年代の台湾で思想犯とされ、青春や自由、命を奪われた6人の若い女性を描いており、その6人の被害者による証言をまとめた書籍とのことです。
本作の舞台は1953年の緑島。ここでは“思想改造”のため、政治犯とされた人々が監禁され、名前でなく数字で呼ばれ、重労働を課せられていました。資料によると、「当時、政治思想犯として拘留されていた者の中には14歳の子どももいた」そうです。映画を観ても、ごく普通の人々が監禁されていたことがわかります。それは、当時本当に“思想だけ”“考えただけ”で捕まった人々が多かったことを表しています。

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)

劇中で交わされる言語に日本語と北京語が含まれている背景には、1894年に日清戦争で日本が勝ち、1895年に下関講和条約で清朝から台湾と澎湖諸島が日本へ割譲され、第二次世界大戦で日本が敗北し中国に台湾が接収されるまで日本の統治が続いていたという歴史があります。台湾の人々の生活には統治していた国の思想と言語が強く影響し、統治する国やリーダーが変わったことで、思想の違いによる不和が起きたのだと考えられます。映画公式資料によると、左派分子や共産スパイの摘発を名目に弾圧が続き、1949年から1960年の間に「反乱団体の摘発が100件、人数にして約2,000人が処刑され、死刑を免れた者も約8,000人が10年程度から無期懲役にいたる服役を命じられ、そのうち確実に共産党員であった者は900人ほどで、その他約9,000人は冤罪であった」とされています。

映画『流麻溝十五号』

日本にとっても無縁ではない、こうした歴史を本作をきっかけに知ることができます。本作では、ありのままの自分で生きることを願いながら静かに闘っていた女性達の姿が描かれています。彼女達の姿を見ていると、私達が当たり前に感じている日常の尊さを実感します。

デート向き映画判定

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)

厳しい現実を生き抜こうとする人々の姿を描いているので、デートで観るタイプの作品とは言い難いですお互いに興味が合えば、デートで観るのもアリですが、どちらかというと、1人でじっくり観るか、台湾や世界史に関心のある人と観に行くほうが良いと思います。できれば、本作を観る前にちらっと台湾の歴史について大まかな情報だけでも入れておくことをオススメします。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『流麻溝十五号』連俞涵(リエン・ユーハン)

本作の背景には蒋介石の独裁政治があり、1人の判断で多くの台湾人の自由や命が奪われたとされています。台湾と中国、日本との関係がある程度わかっていなければついていけないところもあるので、学校で習ってから観ると良いと思います。本作で描かれている時代の世界史に興味を持つきっかけにもなりそうです。

映画『流麻溝十五号』余佩真(ユー・ペイチェン)/連俞涵(リエン・ユーハン)/徐麗雯(シュー・リーウェン)

『流麻溝十五号』
2024年7月26日より全国順次公開
太秦
公式サイト

©thuànn Taiwan Film Corporation

TEXT by Myson

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ スワイプ:マッチングの法則【レビュー】

リリー・ジェームズが主演とプロデューサーを兼任する本作は…

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行【レビュー】

パラリンピックやハンディキャップ・インターナショナルのアンバサダーを務めるアルテュスが…

映画『消滅世界』蒔田彩珠/眞島秀和 眞島秀和【ギャラリー/出演作一覧】

1976年11月13日生まれ、山形県出身。

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン Fox Hunt フォックス・ハント【レビュー】

“狐狩り隊(=フォックス・ハント)”と呼ばれる経済犯罪捜査のエリートチームが、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰めるスリリングな攻防戦が描かれた本作は…

Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック フランケンシュタイン【レビュー】

メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」はこれまで何度も映像化されてきました。そして、遂にギレルモ・デル・トロ監督が映画化したということで…

映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ 大命中!MEは何しにアマゾンへ?【レビュー】

『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』という邦題がいい感じで「どういうこと?」と好奇心をそそります(笑)…

映画『君の顔では泣けない』芳根京子 芳根京子【ギャラリー/出演作一覧】

1997年2月28日生まれ。

映画『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー 『白の花実』美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんインタビュー

今回は『白の花実』に出演する美絽さん、池端杏慈さん、蒼戸虹子さんにお話を伺いました。撮影前に準備されたことや、本編を観た感想を直撃!

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ウィキッド ふたりの魔女』シンシア・エリヴォ/アリアナ・グランデ トーキョー女子映画部が選ぶ 2025年ベスト10&イイ俳優MVP

2025年も毎年恒例の企画として、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集!

ネットの普及によりオンラインで大抵のことができ、AIが人間の代役を担う社会になったからこそ、逆に人間らしさ、人間として生きる醍醐味とは何かを映画学の観点から一緒に探ってみませんか?

映画『チャップリン』チャーリー・チャップリン『キッド』の一場面 映画好きが選んだチャーリー・チャップリン人気作品ランキング

俳優および監督など作り手として、『キッド』『街の灯』『独裁者』『ライムライト』などの名作の数々を生み出したチャーリー・チャップリン(チャールズ・チャップリン)。今回は、チャーリー・チャップリン監督作(短編映画を除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。

学び・メンタルヘルス

  1. 人間として生きるおもしろさを知る【映画学ゼミ第4回】参加者募集
  2. 映画『殺し屋のプロット』マイケル・キートン
  3. 映画学ゼミ2025年12月募集用

REVIEW

  1. 映画『スワイプ:マッチングの法則』リリー・ジェームズ
  2. 映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』アルテュス/アルノー・トゥパンス/ルドヴィク・ブール
  3. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  4. Netflix映画『フランケンシュタイン』オスカー・アイザック
  5. 映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』リュ・スンリョン/チン・ソンギュ/イゴール・ペドロゾ/ルアン・ブルム/JB・オリベイラ

PRESENT

  1. 映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』チャージングパッド
  2. 映画『ただ、やるべきことを』チャン・ソンボム/ソ・ソッキュ
  3. 映画『グッドワン』リリー・コリアス
PAGE TOP