アンナとドリス夫妻は、里子のシモンを迎え入れ、実子の息子2人も含め家族5人で幸せに暮らしています。シモンを迎え入れて4年半、一家にとってシモンは家族の一員で、シモン自身も家族に馴染んでいます。そんなある日、シモンの実の父親から突然「シモンを手元で育てたい」と申し出があります。
4年半の間に少しずつ育んできた家族の絆を想像すると、突然離れることになるのは本当に辛いだろうなと感じます。特に里親でありながら実子と同じようにシモンを育ててきたアンナにとっては厳しい現実を突きつけられます。物語の行方は本編でご確認いただくとして、1番難しいと感じるのは里親が里子に対してどこまで愛情を注ぐのかという点。本作のアンナの場合、シモンに深い愛情を注いでいて、離れることは想像もしておらず、「実の父親にシモンを取られてしまう」という恐怖心もあるように見えます。かといって、里子といつか離れることを考えながら生活をするのも違和感があります。本作の公式資料によると、フランスでは、公的機関だけでなく地域ぐるみで、困難な状況にいる児童と里親家族を支援する活動が行われおり、劇中でも描かれているように、週末は実の家族と過ごし、平日は里親の家庭で過ごすなど、柔軟な里親制度があるそうです。フランスと日本の里親制度は違う点もあるようなので、これを機に日本の里親制度を調べたり、考えるきっかけにもなると思います。
また、複雑な心境を抱える母親のアンナを演じたメラニー・ティエリーをはじめ、アンナを支える夫を演じたリエ・サレム、里子のシモンを演じたガブリエル・パヴィの名演も見逃せません。アンナとシモンを中心とした複雑な人間ドラマも見どころなので、さまざまな人物の言動に翻弄されながら、結末を観届けてください。
恋愛というよりも家族の深い愛をテーマにした作品なので、ロマンチックなムードにはなれません。もし将来結婚を考えているカップルであれば、本作の愛情溢れる家族関係は参考になると思います。鑑賞後は本作に登場した家族について話したり、お互いの家族観について話すと、結婚後の生活も想像しやすくなりそうです。
キッズは、シモンや兄弟達の気持ちなら共感できそうです。ティーンの場合はアンナ夫婦、シモンの実の父親など、大人の気持ちも想像しながら観てみてください。里親制度についてわからない点は鑑賞後に調べてみて、里子が幸せになるためにはどうしたら良いのか、自分なりに考えてみて欲しいと思います。
『1640日の家族』
2022年7月29日より全国公開
ロングライド
公式サイト
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TEXT by Shamy