本作は、ベトナム戦争に反対する抗議デモを起こした複数のグループのリーダーが、共謀して暴動を扇動した罪に問われた実際の裁判をアーロン・ソーキン監督が映画化。エディ・レッドメイン、マーク・ライランス、サシャ・バロン・コーエン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・キートン、アレックス・シャープ、ジョン・キャロル・リンチ、ジェレミー・ストロング、フランク・ランジェラ、ケルヴィン・ハリソン・ジュニアなど、蒼々たる名優達が出演しているだけでも、ただものでない映画だとわかります。
物語の舞台は1968年のシカゴ。当時の大統領リンドン・ジョンソンは、ベトナム戦争への徴兵数を増やしていました。多くの兵士が犠牲になっている状況に対して、立ち上がったのが、民主社会学生同盟(SDS)のトム・ヘイデンとレニー・デイヴィス、青年国際党(イッピー)のアビー・ホフマン、ジェリー・ルービン、ベトナム戦争終結運動のリーダー、デヴィッド・デリンジャー、ブラックパンサー党全国院長のボビー・シールでした。彼等は不当に逮捕され、一同に裁判が行われるのですが、判事ははなから彼等を有罪にしようとしているようにしか見えず非協力的で、検事も汚い手を使います。圧倒的に弁護側が劣勢のなか、彼等もあの手この手を考えて反撃するのですが…。その攻防戦は本編でお楽しみ頂くとして、この裁判には政治裁判の要素が色濃くあります。1968年はキング牧師が暗殺された年でもありますが、裁判の様子を描くなかで、黒人差別、政治腐敗、警察への不信感など、あらゆる社会問題が映し出されていて、こんな時代に戦った若者達の勇姿に共感せずにはいられません。また内容はシリアスなのですが、サシャ・バロン・コーエン、ジェレミー・ストロングが演じるアビーとジェリーのコンビがちょいちょいおもしろくて、ユーモアとウィットに富んだ作品になっている点も本作の魅力です。サシャ・バロン・コーエンが演じたアビーは最終的にめちゃめちゃカッコ良くて、思わずニヤニヤしてしまいますよ。さらに頭脳派達で繰り広げられる会話から、次の手が出てくる展開も観ていて爽快です。
そして、マーク・ライランスが演じる弁護士、ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じる検察官も裁判の行方を握っており、人間ドラマを盛り上げています。最後の最後まで政治圧力にイライラ、悶々とさせられますが、最後はとても巧みで人道的な方法で見事な反撃をするので、鳥肌が立ちますよ。これは見逃してはいけない名作です。Netflix作品ですが、一部の映画館でも公開されているので、ぜひ映画館で観て欲しい豪華な作品とも言えます。
法廷モノは人気がある一方で、難しそうに思う人もいるかもしれませんが、裁判の内容そのものはシンプルなので、難しくてついていけないということはありません。登場人物がとても多いので、そこだけ覚えるまでが大変ですが、だからこそデートで一緒に観て、鑑賞後に復習できるのが良いと思います。映画館で観るのもオススメですが、お家デートで観るなら、2度、3度とその場で繰り返して観たり、1度観終わった後に、確認したいシーンだけ振り返ったりもできます。映画好きにはたまらない作品なので、映画好きカップルに特にオススメです。
洋画でしかもすごくたくさんのキャラクターが出てくるので、名前と顔を一致させた上で人間関係を把握するのが、結構大変です。なので、洋画を観慣れている中高生以上の人にオススメです。Netflix作品なので自宅で観るなら、巻き戻したりしながら丁寧に観ていくのもありだと思います。すごく頭の切れる学生達のやり取りは観ていてとてもカッコ良いので、会話劇としてもぜひ楽しんでください。
『シカゴ7裁判』
2020年10月16日よりNetflixにて配信開始
キノフィルムズ
公式サイト
TEXT by Myson