ジョン・カーペンターとは
ホラー映画の帝王と呼ばれるジョン・カーペンターは、1948年1月16日、ニューヨーク州カーセージ出身。1968年に、名門と言われる南カリフォルニア大学の映画芸術学部に入学。同時期にはジョージ・ルーカス、ロバート・ゼメキスも在籍していた。カーペンターは大学在学中、自主製作SF映画『ダーク・スター』(1974)で長編デビューを果たした。1978年には『ハロウィン』が大ヒットし、後にホラー映画の金字塔と呼ばれるようになる。以降、『ニューヨーク1997』(1981)、『遊星からの物体X』(1982) 、『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)など、SF・ホラー映画一筋で数々の映画を世に送り出してきた。監督作品のほとんどで自ら映画音楽を担当し、シンセサイザーを積極的に導入したエレクトロニックミュージックは先駆的で、音楽界にも影響を及ぼした。近年は特に意欲的に音楽活動に励み、リブート企画『ハロウィン』(2018)と『ハロウィンKILLS』(2021)では、息子のコディ・カーペンターと共に音楽を手がけた。
ニューヨーク1997
“犯罪発生率400%を越えたアメリカ”という設定でまず興味が湧き、ニューヨークが巨大監獄になっているという状況もユニークで、観る前からおもしろそうな匂いをプンプン感じます。若かりしカート・ラッセルもカッコ良くて、ロン毛が時代を象徴しているようにも思えて、今観るからこそ一層いろいろな見どころがあると感じます。
見た目や立場だけで善と悪が決まるのではないというストーリーや結末には、社会的なメッセージが感じられて、1981年の作品でありながら、そこから40年経った今でも社会は何も変わっていないことを痛感します。また、主人公のようにかつては英雄だった人物まで囚人となってしまう世の中を描いている点では、現代にも続く貧富の差や、一握りの権力者が支配する社会の身勝手なルールによって囚人とされてしまう人々が蔓延することを予見しているようで、今観ても他人事には思えません。本作はホラーではありませんが、また違った怖さを感じられる作品です。
ザ・フォッグ
スプラッター要素のあるホラー映画ですが、人間のエゴがテーマとされている点で、誰にでも思い当たる節があると思うとなおゾッとするストーリーです。
100年祭を迎えるアントニオ・ベイという港町が舞台となっていて、そこには恐ろしい伝説があります。その伝説は100年前に起こった出来事に由来していて、その日は霧が立ちこめていたということで、霧が重要な役割を果たしています。100年前の出来事で命を奪われた人々が霧と共に蘇り、住人達に恨みをはらすというストーリーで、その亡霊の存在も恐ろしいですが、そうなったいきさつが語られると、そっちの人間のほうが怖いとも思えて、人間の愚かさと恐ろしさを感じます。
こういったところまで表現されているからジョン・カーペンター監督作っておもしろいのだなと改めて思えます。若かりし頃のジェイミー・リー・カーティスの姿も新鮮なので、映画好きの方に特にオススメです。
ゼイリブ
冒頭では何が始まるのかわからずに観て、主人公のネイダ(ロディ・パイパー)がガテン系の仕事をしているシーンでは、「脱いだらスゴい!」的なムキムキな腕などにビックリしますが(笑)、徐々に緊張感のあるシーンへと切り替わっていきます。余談ですが、ロディ・パイパーって元プロレスラーなんですね。後半でやたら長い喧嘩シーンがあって、プロレスみたいだなと思って観ていたのですが納得がいきました(笑)。
それはそれで見どころとして、本作は「この世の中は実は…」というストーリーでそれに気付いた主人公が奔走する姿を描いています。でも各国の政府が動くような大ごととして描くのではなく、その日暮らしを余儀なくされている1人の男性が自分ができる範囲で問題解決に向けて行動する姿を描いている点でとても親近感が湧きます。同時に比喩として観ると、生活に困窮している人達がいくら叫んでも普段いかに世の中から相手にされずにいるかということを描いているようにも思えます。ラストは個人的に「ここで終わるのか!」となりましたが、そのちょっと意地悪にも思える結末に味があるなと思います。怪しい人、怪しい行動に注視しながら観るおもしろさもあるので、誰かと一緒に観るのも良いと思います。旧作とはいえ色褪せない作品です。
<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>
『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』
2022年1月7日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺にて3週間限定公開
ロングライド
公式サイト
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TEXT by Myson