REVIEW

ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022

  • follow us in feedly
  • RSS
<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>『ニューヨーク1997』カート・ラッセル

ジョン・カーペンターとは
ホラー映画の帝王と呼ばれるジョン・カーペンターは、1948年1月16日、ニューヨーク州カーセージ出身。1968年に、名門と言われる南カリフォルニア大学の映画芸術学部に入学。同時期にはジョージ・ルーカス、ロバート・ゼメキスも在籍していた。カーペンターは大学在学中、自主製作SF映画『ダーク・スター』(1974)で長編デビューを果たした。1978年には『ハロウィン』が大ヒットし、後にホラー映画の金字塔と呼ばれるようになる。以降、『ニューヨーク1997』(1981)、『遊星からの物体X』(1982) 、『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)など、SF・ホラー映画一筋で数々の映画を世に送り出してきた。監督作品のほとんどで自ら映画音楽を担当し、シンセサイザーを積極的に導入したエレクトロニックミュージックは先駆的で、音楽界にも影響を及ぼした。近年は特に意欲的に音楽活動に励み、リブート企画『ハロウィン』(2018)と『ハロウィンKILLS』(2021)では、息子のコディ・カーペンターと共に音楽を手がけた。

ニューヨーク1997

<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>『ニューヨーク1997』カート・ラッセル

“犯罪発生率400%を越えたアメリカ”という設定でまず興味が湧き、ニューヨークが巨大監獄になっているという状況もユニークで、観る前からおもしろそうな匂いをプンプン感じます。若かりしカート・ラッセルもカッコ良くて、ロン毛が時代を象徴しているようにも思えて、今観るからこそ一層いろいろな見どころがあると感じます。
見た目や立場だけで善と悪が決まるのではないというストーリーや結末には、社会的なメッセージが感じられて、1981年の作品でありながら、そこから40年経った今でも社会は何も変わっていないことを痛感します。また、主人公のようにかつては英雄だった人物まで囚人となってしまう世の中を描いている点では、現代にも続く貧富の差や、一握りの権力者が支配する社会の身勝手なルールによって囚人とされてしまう人々が蔓延することを予見しているようで、今観ても他人事には思えません。本作はホラーではありませんが、また違った怖さを感じられる作品です。


ザ・フォッグ

<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>『ザ・フォッグ』

スプラッター要素のあるホラー映画ですが、人間のエゴがテーマとされている点で、誰にでも思い当たる節があると思うとなおゾッとするストーリーです。
100年祭を迎えるアントニオ・ベイという港町が舞台となっていて、そこには恐ろしい伝説があります。その伝説は100年前に起こった出来事に由来していて、その日は霧が立ちこめていたということで、霧が重要な役割を果たしています。100年前の出来事で命を奪われた人々が霧と共に蘇り、住人達に恨みをはらすというストーリーで、その亡霊の存在も恐ろしいですが、そうなったいきさつが語られると、そっちの人間のほうが怖いとも思えて、人間の愚かさと恐ろしさを感じます。
こういったところまで表現されているからジョン・カーペンター監督作っておもしろいのだなと改めて思えます。若かりし頃のジェイミー・リー・カーティスの姿も新鮮なので、映画好きの方に特にオススメです。


ゼイリブ

<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>『ゼイリブ』

冒頭では何が始まるのかわからずに観て、主人公のネイダ(ロディ・パイパー)がガテン系の仕事をしているシーンでは、「脱いだらスゴい!」的なムキムキな腕などにビックリしますが(笑)、徐々に緊張感のあるシーンへと切り替わっていきます。余談ですが、ロディ・パイパーって元プロレスラーなんですね。後半でやたら長い喧嘩シーンがあって、プロレスみたいだなと思って観ていたのですが納得がいきました(笑)。
それはそれで見どころとして、本作は「この世の中は実は…」というストーリーでそれに気付いた主人公が奔走する姿を描いています。でも各国の政府が動くような大ごととして描くのではなく、その日暮らしを余儀なくされている1人の男性が自分ができる範囲で問題解決に向けて行動する姿を描いている点でとても親近感が湧きます。同時に比喩として観ると、生活に困窮している人達がいくら叫んでも普段いかに世の中から相手にされずにいるかということを描いているようにも思えます。ラストは個人的に「ここで終わるのか!」となりましたが、そのちょっと意地悪にも思える結末に味があるなと思います。怪しい人、怪しい行動に注視しながら観るおもしろさもあるので、誰かと一緒に観るのも良いと思います。旧作とはいえ色褪せない作品です。

<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』

<ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022>
『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』
2022年1月7日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺にて3週間限定公開
ロングライド
公式サイト

© 1981 STUDIOCANAL SAS – All Rights Reserved.
© 1979 STUDIOCANAL All Rights Reserved.
© 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『サラリーマン金太郎 【暁】編』鈴木伸之/橋本じゅん サラリーマン金太郎 【暁】編【レビュー】

原作漫画の連載が始まったのは1994年のようですが、本作では現代に設定を置き換えられています…

映画『#彼女が死んだ』シン・ヘソン #彼女が死んだ【レビュー】

主人公のク·ジョンテ(ピョン・ヨハン)は、不動産公認仲介士で、彼の何気ない日常を映し出しているシーンから始まったと思いきや…

映画『エマニュエル』ノエミ・メルラン エマニュエル【レビュー】

エロティシズムとは何ぞやというのを突き詰めている作品…

映画『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』フレッド・ヘッキンジャー フレッド・ヘッキンジャー【ギャラリー/出演作一覧】

1999年12月2日生まれ。アメリカ出身。

映画『366日』赤楚衛二/上白石萌歌 映画に隠された恋愛哲学とヒント集77:手放す勇気の必要性『366日』

今回は、2000年に結成された沖縄出身のアーティスト、HYの代表曲「366日」をモチーフにした映画『366日』を題材に、恋愛における「手放す勇気の必要性」について考えます。

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『カルキ 2898-AD』プラバース/ディーピカー・パードゥコーン/アミターブ・バッチャン カルキ 2898-AD【レビュー】

“バーフバリ”シリーズのプラバース主演、インド神話とSFが融合した物語と聞くだけで…

Netflixシリーズ『極悪女王』ゆりやんレトリィバァ ゆりやんレトリィバァ【ギャラリー/出演作一覧】

1990年11月1日生まれ。奈良県吉野郡出身。

映画『ブルータリスト』エイドリアン・ブロディ/フェリシティ・ジョーンズ 『ブルータリスト』特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『ブルータリスト』特別先行試写会 5組10名様ご招待

映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』 ソニック × シャドウ TOKYO MISSION【レビュー】

シリーズ3作目となる本作では、ソニックにそっくりな強敵シャドウが登場…

部活・イベント

  1. 【ARUARU海ドラDiner】サムライデザート(カップデザート)
  2. 【ARUARU海ドラDiner】トーキョー女子映画部 × Mixalive TOKYO × SHIDAX
  3. 【ARUARU海ドラDiner】サポーター集会:パンチボール(パーティサイズ)
  4. 【ARUARU海ドラDiner】プレオープン
  5. 「ARUARU海ドラDiner」202303トークゲスト集合

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』マイケル・ファスベンダーほか トーキョー女子映画部が選ぶ 2024年ベスト10&イイ俳優MVP

毎年恒例のこの企画では、トーキョー女子映画部の編集部マイソンとシャミが、個人的なベスト10と、イイ俳優MVPを選んでご紹介します。

映画『ソルト』アンジェリーナ・ジョリー 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】個性部門

本部門で上位にランクインしたのはどの俳優なのでしょうか?2024年のイイ俳優ランキングは今回がいよいよ最終回です。ぜひ最後まで結果を見届けてください!

映画『聖杯たちの騎士』ナタリー・ポートマン 映画好きが推すイイ俳優ランキング【海外40代編】演技力部門

イイ俳優ランキング【海外40代編】から、今回は<雰囲気部門>のランキングを発表します。錚々たる俳優が揃うなか、総合と比べてどのようにランキングが変化したのでしょうか?

REVIEW

  1. 映画『サラリーマン金太郎 【暁】編』鈴木伸之/橋本じゅん
  2. 映画『#彼女が死んだ』シン・ヘソン
  3. 映画『エマニュエル』ノエミ・メルラン
  4. 映画『カルキ 2898-AD』プラバース/ディーピカー・パードゥコーン/アミターブ・バッチャン
  5. 映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』

PRESENT

  1. 映画『ブルータリスト』エイドリアン・ブロディ/フェリシティ・ジョーンズ
  2. 中国ドラマ『長相思』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ライオン・キング:ムファサ』オリジナルスウェットシャツ
PAGE TOP