REVIEW
2012年、バレリーナのジョイ・ウーマックはアメリカ人女性で初めてボリショイ・バレエ団とソリスト契約を結びました。本作は彼女の実話を基に描かれています。ジョイは、ワシントンD. C.の名門キーロフ・アカデミーでロシア・バレエを学び、15歳でボリショイ・アカデミーに入学、2012年、5+という最優秀の成績を得て卒業しました。その後、クレムリン・バレエ団でプリンシパルを2018年まで務めた後も各国のバレエ団で活躍しています(映画公式資料)。

彼女がアメリカ人女性で初めてボリショイ・バレエ団に入ることはわかった上で本作を観るとして、そこまでのいきさつだけではなく、その後の奮闘も人並み外れています。バレリーナとして技術を磨くことはもちろんのこと、アメリカ人というアイデンティティが相当な重しになります。そこで、彼女が下す決断を観ると、「そこまでやるのか!」と驚かされます。

また、本作には本物のトップダンサーが複数出演している点も見どころです。ニコライ役は、『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』でルドルフ・ヌレエフを演じ、数々のバレエコンクールでメダルを受賞、現在も現役のダンサーであるオレグ・イヴェンコが務めています。他にも、オランダ国立バレエで17年間踊っている現役ダンサーのエリカ・ホーウッドや、オランダ国立バレエの元プリンシパル、アルチュール・シェステリコフがキーパーソンを演じています。また、ボリショイ・バレエの元ソリストで、現在はポーランド国立バレエのプリンシパルであるチナラ・アリザーデも劇中で踊る姿が観られます。そして、「当代最高のバレリーナとして名高いスーパースター」ナタリア・オシポワが本人役で出演し「瀕死の白鳥」を踊っています。ジョイの師であるヴォルコワを演じたダイアン・クルーガーも、英国ロイヤル・バレエスクールで学びダンサーを目指していた経歴を持っています(映画公式資料)。

バレエに詳しい方は上記のダンサー達の名前を聞くだけで観たくなるのではないでしょうか。でも、本作にはバレエに詳しくない方にも身近な問題が取り上げられています。出自の違いによる差別、性的搾取、体型維持のための不健全な行動等、複数の問題がバレリーナ達の生涯に影響を与えていることがわかります。このような問題とジョイ(タリア・ライダー)はどう向き合ったのかが赤裸々に描かれている点で、本作は多くのサクセスストーリーとは一線を画しています。
デート向き映画判定

さまざまな社会問題が描かれているので、ロマンチックなムードになれる作品とはいえません。ただ、主人公ジョイの奮闘はかなりエキセントリックではあるものの、何かに打ち込んでいる方にとっては彼女に共感できるところがあるでしょうし、自分を追い込み過ぎる様子は周囲からすると心配でならないので、隣で支える側の方にも共感できるところがあると思います。似たような状況に陥りがちなカップルは一緒に観て、普段お互いに感じていることを話し合うきっかけにすると良さそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

ジョイは志が高く、目標に向かってどんな努力も惜しみません。その姿には良いお手本になるところもあれば、危なっかしくて反面教師として捉えるべきところもあります。ただし、ジョイは自分の意志、自分の責任で決断し行動しています。何より後悔しないよう、その時にできるすべてのことをやり遂げてきたからこそ、偉大なバレリーナになったのも事実だと思います。真似はできないにしても、精神的には学ぶところが大いにあると思います。

『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』
2025年4月25日より全国公開
ショウゲート
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2025年4月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
