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最悪な子どもたち【レビュー】

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映画『最悪な子どもたち』

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北フランスの荒れた地区の複雑な家庭環境で暮らす子どもたちをオーディションで選び、映画に出演させようとするところから、物語は始まります。本作は、その映画を撮る様子を追ったメイキングのように作られています。だから、出演者達は、本作の役柄を演じながら、劇中劇の役柄も演じていることになります。これは演技経験者でも難しそうですが、メインキャストの4人の子ども達はなんと、演技未経験者。映画公式サイトによると、撮影地の学校や児童養護施設で行われたオーディションで選ばれた子ども達だそうです。4人とも迫真の演技をみせていて、特にリリを演じたマロリー・ワネック、ライアンを演じたティメオ・マオーは、さまざまな感情をリアルに表現していて、見入ってしまいます。
そして、本作は映画作りにおける倫理観を問う内容でもあります。まず、なぜ複雑な環境で暮らす子ども達を主人公にするのか、なぜ彼等を俳優として起用するのか、観ながら考えさせられると同時に、本作のクライマックスでは登場人物達の間でも議論が繰り広げられます。また、劇中劇のストーリーは子ども達の体験が設定として組み込まれていて、子ども達は演じることで、辛い体験を追体験することになります。この様子は、子ども達の実態を生々しく描きたい作り手(大人)のエゴにも見えたり、映画作りに参加させることで鬱積した感情を解放させようとしているようにも見えたり、さまざまな視点をもたらします。1人でじっくり観るのも良し、誰かを誘って意見交換をするのも有意義な作品です。

デート向き映画判定

映画『最悪な子どもたち』

恋愛要素も出てきますが、デートで観て気まずくなるようなシーンはありません。ただ、ドキドキワクワクするような作品というよりも、日常を淡々と映し出し、社会問題に目を向ける作品なので、派手な展開がある作品を好む方を誘うには不向きでしょう。一方、映画デートに慣れているカップルは、感想を語り合うことで、お互いのモノの見方を共有するきっかけにできそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『最悪な子どもたち』

皆さんと同じ世代のキャラクターが主人公なので、国や境遇が違ったとしても、鑑賞移入しやすいでしょう。映画に出演することは、一見華やかに思えますが、本作で観る撮影現場では多くの人達のさまざまな感情が絡み合い、ストレスをもたらしているようにも見えます。そういったシーンから、表向きは華やかに見える事柄の裏面も想像できるのではないでしょうか。

映画『最悪な子どもたち』

『最悪な子どもたち』
2023年12月9日より全国順次公開
マジックアワー
公式サイト

©Eric DUMONT – Les Films Velvet

TEXT by Myson

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