やっぱりトム・シリングはカッコ良くて、セクシーです!トム・シリング目当てに観るだけでも満足できます。ただ、鬱々としたストーリーで、正直なところ、観る人を選びそうな作品ではあります。でも、ロマンチックなラブストーリー、哲学的な人間ドラマは見応え充分で、ハマる人にはとことんハマる作品なのではないでしょうか。ちなみに、私にはとてもハマりました。
物語の舞台となった1931年のドイツは実際にどんな時代だったかというと、1929年にアメリカで起きた株の大暴落による世界恐慌の煽りを受けて、大手銀行の破綻や多くの企業が倒産したといわれています。失業者も増えている様子が劇中から伝わってきますが、本作に登場するキャラクター達と現代人が抱えている焦燥感に通じるものを感じます。また、本作には、才能はあるけど機会に恵まれない者、機会を得る代わりに大事なものを犠牲にする者、お金はあるけど他が満たされない者が登場します。こういった葛藤はどんな時代にも普遍的にあることで、誰かしら自分を投影できるキャラクターが見つかると思います。
ファビアンには、これでもか、これでもかと苦境が襲いかかります。それでもプライドを捨てず、愛する人、見知らぬ人に親切なファビアンの人柄に癒されるシーンが多々あります。だからファビアンに感情移入し、応援したくなります。彼にどんな結末が起こるのかは本編で観ていただくとして、本作は観る者に、どんな人間で在りたいかを問うてきます。心の中にある本当に大切なものを見つけるために、観てみてはいかがでしょうか。
トム・シリングが演じるファビアンと、ザスキア・ローゼンダールが演じるコルネリアのラブラブなシーンが満載で、デートのムードは盛り上がると思います。ただ、カップルとして少なからず直面しそうな問題も出てくるので、突然現実に引き戻されるシーンもあります。キャリアと恋愛で心が揺れている人は一旦1人で観たほうが良いかもしれません。
3時間近い上映時間なので、若い皆さんにとってはそこが1つハードルになりそうですね。ただ、夢や志を持つ若者達の物語なので、将来について考え始めているティーンの皆さんは、少し先の未来をシミュレーションできるところがありそうです。劇中ではかなり厳しい現実が描かれているので、物事を悲観的に捉えがちな方が観ると、一層悲観的になる可能性はありますが、冷静さや客観的な視点を得たい方は観てみてください。
『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』
2022年6月10日より全国順次公開
PG-12
ムヴィオラ
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TEXT by Myson