REVIEW
“バッド・ミツバ”とは、ユダヤ教徒の13歳の成人式です。本作では、事故で妻を亡くし、失意にくれるユダヤ教の先唱者ベン(ジェイソン・シュワルツマン)が、子どもの頃の音楽教師カーラ(キャロル・ケイン)に再会し、カーラの“バッド・ミツバ”を行うために奔走するうちに再生していく物語です。
本作の邦題は『セカンドステップ 僕らの人生第2章』とあるので、40歳のベンと70歳のカーラの第2の人生を描くのだろうことは想像できます。では70歳のカーラがなぜ今“バッド・ミツバ”を行おうとしているかといえば、その背景を知ると、彼女が過去に手放した人生が見えてきます。ベンも妻を亡くしていて、生きる気力を失っています。とはいえ、本作には悲壮感が漂いながらも、その隙間にユーモアが見え隠れしていて、ジェイソン・シュワルツマンの演技力とユーモアのセンスを感じます。
一方、ベンの周囲の人々は彼を立ち直らせようとあれこれ世話を焼くものの、失意に陥っている人の心がそう簡単に癒されるわけではない面もリアルに映し出しています。でも、ベンはカーラと再会し、カーラの“バッド・ミツバ”への思いや努力を見ているうちに内面が変化していきます。つまり、ベンは無理に元気なふりをしたり、自分に元気だと言い聞かせているというよりも、自分の状況を受け入れているように見えます。なので、理由は違えど、今気持ちが落ちている方が観ても、等身大で共感できるのではないかと思います。
ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。
本作では、ベンの気持ちに寄り添う2人の人物が対比されて描かれています。この2人の対比には、人生のパートナーを求める上で、性的な要素の重要度が投影されているように感じました。第2の人生を歩む上で、パートナーに性的な役割を求めるのか否か。それは人によって重要度や、相手にどこまで求めるのかという程度が変わってくるように思います。終盤のシーンで、あるやり取りに嫌悪感を示していたキャラクター達は、カップルには性的な関係性があって当たり前という価値観なのかもしれません。ただ、ベンはある人物とセクシャルなムードになった際に、逆に恋愛を超えた人間愛のほうが、第2の人生には必要と悟り、もう一方の人物の存在の大きさに気づいたのではないかと思います。
デート向き映画判定
主人公が40歳で、第2の人生をテーマに描いているので、中高年カップルのほうが自分事として観られる部分が多いと思います。本作の結末をどんな風に受けとめるかによって、お互いの価値観の違いに気づく可能性もあります。感想として明確に相手の価値観を聞いて気まずくなりそうな予感がする方は、1人で観るほうが無難でしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定
ユダヤ教について勉強になる部分はあるものの、若い皆さんにはまだピンとこない部分があると思います。ただし、今の自分にとってどんな人と一緒にいたいか、どんな人と一緒にいると幸せなのか、客観的に観る機会にはなると思います。若いうちは一層周囲からいろいろといわれると思います。それでも、自分の気持ちを大事にする姿勢を主人公から学べると思います。
『セカンドステップ 僕らの人生第2章』
2024年12月20日より全国公開
ロングライド
公式サイト
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TEXT by Myson
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