REVIEW
女とはどういう生き物か、男とはどういう生き物か、女として生きるとはどういうことか、男として生きるとはどういうことか、そんなことを改めて考えさせられる衝撃的なストーリーです。近年では、ジェンダーレスという考え方が徐々に浸透してきたとはいえ、そして自認がどうであれ、人間は男か女かという呪縛からは逃れられないのかもしれません。本作を観ると、その現実を突きつけられます。
主人公は高校教師の原美鈴(奈緒)。美鈴は誰にも言えない秘密を抱えていたなか、ある教え子との交流を通して、自分の問題と向き合うようになります。美鈴に何が起こるのかは本編でご覧いただくとして、本作はセリフの一つひとつに重み、深みがあります。同じ言葉でも、立場や解釈によって意味が異なり、都合の良い解釈にも、自分を守るための解釈にもなりえます。そして、そうした解釈の違いがそのまま社会の歪みを表していることに気付かされます。
性別の違いによる力関係が描かれていると同時に、性別を越えた立場の違いによる力関係を描いている点も秀逸です。たとえば、教師と生徒という関係性においても、それが見え隠れしていて、実際にはいろいろな背景が混在するなかで、自分が強い立場にあるのか、弱い立場にあるのか、対等な立場なのかの判断が“正しく”できているのかわからず困惑するキャラクター達の心情が伝わってきます。
奈緒、三吉彩花、風間俊介の演技も見ものです。彼等の真に迫った演技によって、本作で起きている出来事の恐ろしさをリアルに体感できました。キーパーソンとなる生徒を演じた猪狩蒼弥の演技もとても自然であどけなさがあり、観客は彼の目を通して世の中の矛盾や不可解さを徐々に理解していくことができるのではないでしょうか。
本作から大変強いメッセージが発せられている背景には、原作者、鳥飼茜氏の思いがあることがうかがえます。本作の公式サイトには、鳥飼茜氏のコメントが載っていますので、鑑賞後にぜひ合わせて読んでみてください。
デート向き映画判定
大変重いテーマを扱っていて、キャラクター達に起こる出来事や性的描写などから考えると、デート向きの映画ではないものの、カップルにとってもすごく重要なテーマが描かれています。劇中には自分達の問題を見て見ぬ振りをしてきたキャラクターも出てきます。彼等のようにならないためにも、敢えてカップルで観る意義があると思います。自分達の関係性も客観視する機会にできそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定
皆さんと同じ世代のキャラクターが登場し、大人達の言動に困惑しながらも、自分なりに物事を理解し、成長しようとする姿は良いお手本になると思います。R-15なので15歳以上なら観られますが、かなり衝撃的なシーン、怖いシーンも出てくる点は覚悟しておきましょう。人によってはかなり辛くなる可能性がある内容なので、どういうストーリーか知っておきたい方は、映画公式サイトの原作者のコメントを読んでみてください。
『先生の白い嘘』
2024年7月5日より全国公開
R-15+
松竹ODS事業室、イノベーション推進部
公式サイト
©2024「先生の白い嘘」製作委員会 ©鳥飼茜/講談社
TEXT by Myson
関連作
漫画 Kindle版「先生の白い嘘」鳥飼茜 著/モーニングコミックス
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情報は2024年6月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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