本作は、香港を代表する監督、サモ・ハン(洪金寶)、アン・ホイ(許鞍華)、パトリック・タム(譚家明)、ユエン・ウーピン(袁和平)、ジョニー・トー(杜琪峯)、故リンゴ・ラム(林嶺東)、ツイ・ハーク(徐克)による短編を集め、ジョニー・トーがプロデュースしたオムニバス映画です。この豪華監督陣の名前が連なっているだけでも興味津々になりますよね。それぞれの作品に各監督の味が出ていながら、『七人樂隊』と題している通り、調和を感じさせる構成も見事です。全編35mmフィルムで撮影されている点でも、独特な味わいが出ています。
しっとりした作品もあれば、コミカルな作品もあり、観る人それぞれで好みの作品が見つかるはず。どの作品にも人の温かみが感じられる点も本作の見どころです。どの短編も世界観に引き込まれるのであっという間に観終わりますが、中でも個人的に印象に残ったのは、まずサモ・ハン監督の「稽古」です。これはカンフー映画で活躍してきたサモ・ハン・キンポーの修業時代の自伝的エピソードをもとにしています。そして、アン・ホイ監督の「校長」は、切ないけれど人の温かさがすごく伝わってくる作品となっています。最後に登場する短編、ツイ・ハーク監督の「深い会話」は遊び心が満載の不条理コメディで笑いを誘います。
香港映画ファンにとってたまらない作品であるのはもちろん、香港映画を観たことがないという方にとっては香港映画鑑賞デビューにピッタリのオムニバス映画です。
色とりどりの短編が集まっているので、映画の好みが多少違っても、それぞれにお気に入りが見つかると思います。心を和ませてくれる世界観なので、デートのムードも和みそうです。観終わった後は、それぞれのお気に入りの作品について話せるので、会話にも困らないのではないでしょうか。
ティーンが登場するストーリーも複数あり、短編で観やすいので、中学生以上の皆さんに香港映画鑑賞デビューにオススメの作品です。小学生以下の方はPG-12なので大人と一緒に観てください。本作を気に入ったら、各監督の過去の長編作品を観てみると、一層個性を知ることができて、映画鑑賞の幅が広がると思います。
『七人樂隊』
2022年10月7日より全国順次公開
PG-12
武蔵野エンタテインメント
公式サイト
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TEXT by Myson