本作は、俳優としても活躍するジル・ルルーシュが監督と脚本(共同脚本:アメッド・アミディ、ジュリアン・ランブロスキーニ)を務め、マチュー・アマルリック、ギョーム・カネといった、フランスの人気実力派俳優が出演しています。個人的に、冒頭の語りの内容からして好みで、大好きなタイプのフランス映画です。マチュー・アマルリックが演じるうつ病のおじさんほか、シンクロナイズドスイミングチームのメンバーは人生において迷走中で、パッとしない連中ばかり。映画の中では、おじさん達は最初からシンクロのチームに入っているので、どういういきさつでシンクロを始めたのかはわかりませんが、本作は実在するスウェーデンの男性シンクロナイズドスイミングチームのドキュメンタリーから着想を得て作られたようです。筋肉と緊張感がほぼ失われた肉体とセリフや言動が、おじさんらしさをすごくリアルに体現していますが、ギョーム・カネだけは目の保養になります(笑)。でも、ギョーム・カネが演じるキャラクターはすごく曲者で、逆に他のおじさん達は観ていて癒される部分があり、それぞれがとてもチャーミングなキャラクターとして描かれています。女性キャラクターも良い味を出していて、特にレイラ・ベクティが演じる車椅子のコーチが、口が悪い上にスパルタでかなり笑えます。そんなトホホなトレーニングシーンの他にも、おじさん達がいろいろやらかすシーンがあり、声を出して笑っちゃう場面が満載。「なんでやねん!」と心の中でツッコミを入れながら観るのが楽しいし、エモーショナルなシーンを間に絶妙に挟んできて、バランスとテンポの良さも感じます。クライマックスの朝日のシーンはすごく絵画的で美しく、最後はホッコリ。ヨーロッパ映画にハードルを感じている方にも、こういった作品でデビューすることをオススメします。
笑いどころもあって、不器用な人達が頑張る話なので、デートの雰囲気も和むはず。気まずくなるようなラブシーンもないので、初デートで観るのもアリだと思います。鑑賞後は、映画の感想を言い合うのはもちろん、好きなスポーツ、昔やっていたスポーツの話をしても良いし、家族の話、仕事の話など、いろいろな要素が詰まった作品なので、会話のネタも豊富に見つかるはずです。
父と息子、父と娘の話も出てくるので、親子で観るのも良いと思います。普段カッコ良い姿を見せられないでいるお父さん達が、周囲からバカにされながらも一生懸命シンクロナイズドスイミングを練習する姿は、どこか不格好でも、とても輝いて見えるはず。笑えるシーンもいっぱいあるし、ドラマチックな展開もあるので、上映時間の長さもそれほど感じないでしょう。ぜひ若い皆さんも観てみてください。
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』
2019年7月12日より全国公開
PG-12
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
©2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions
TEXT by Myson