本作は、豊原功補、小泉今日子、外山文治監督らが立ち上げた映画制作会社“新世界合同会社”の第1回目のプロデュース作品で、若い男女の切ない逃亡劇が描かれています。俳優を目指して上京するも結果が出ず、オレオレ詐欺をしながら稼いでいる翔太と和歌山の高齢者施設で働くタカラ。ある日、翔太が演劇を教えるために高齢者施設を訪れ、そこで2人は出会います。その数日後、翔太はタカラが刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けているところを目撃し、咄嗟に止めに入りますが、タカラが父親を刺してしまい、そこから2人の逃亡劇が始まります。この展開だけでもドラマチックですが、タカラには心に深い傷を負っている過去もあり、そこに翔太がどう向き合っていくのかにも注目です。
そして、翔太を演じた村上虹郎と、タカラを演じた芋生悠の自然な演技が素晴らしい!2人の名演あってこそ、この物語がよりリアルに見えたと思います。特に芋生悠は、少女にも大人の女性にも見える絶妙な雰囲気があり、観ていてすごく引き込まれます。また、本作は単なる愛の逃避行でなく、若い男女の抱える絶望感や将来への不安に焦点をあてて描かれているのもポイントとなっています。主人公達と同世代の方はもちろん、今の社会を作っている大人にも響く点が多い作品だと思います。ぜひご覧ください!
恋愛部分も少しありますが、どちらかというと若い男女それぞれが抱える問題に焦点を当てた物語なので、デートのムードを盛り上げるタイプの作品ではありません。映画好きや付き合いの長いカップルであれば、単純に1つの作品として受け止められると思うので、観賞後は本作の感想と共に、普段あまり聞けないお互いのより深い部分について話し合うのも良いかも知れません。
PG-12なのでキッズも保護者同伴なら観られますが、父親を刺してしまうタカラの感情や、逃亡中の2人の心の変化などを汲み取れたほうが本作をより理解することができるので、中学生くらいになってから観ることをオススメします。ティーンは、翔太とタカラが、どうして逃げる選択をしたのかということや、2人がそれぞれ抱える苦しみについて考えながら観てください。複雑な人生を送る2人なので、全部に共感することは難しいかも知れませんが、2人の感情に寄り添うことで本作をよりいろいろな角度から観られると思います。
『ソワレ』
2020年8月28日より全国公開
PG-12
東京テアトル
公式サイト
© 2020 ソワレフィルムパートナーズ
TEXT by Shamy