実は舞台になっている大阪府茨木市は、私の地元なので馴染みのある場所がたくさん映るだけでも観る楽しさがありました。主人公達の母校として物語の舞台になっている大阪府立茨木高校は、大阪府内でもトップクラスの高校で、“いばこう”という呼び方も地元民には馴染み深く、映画の中で前田敦子や高良健吾が“いばこう”と言っているセリフを聞くと、茨木市民ならよりこの映画に親近感を持つでしょう。また茨木高校は日本初のノーベル文学賞を受賞した川端康成の母校でもあります。茨木市内には川端康成文学館があり、本作のタイトルになっている「葬式の名人」は川端康成の短編小説のうちの1作です。
本作のストーリーは茨木高校時代に仲の良かった男女が、ある同級生の死をきっかけに集まり、皆で彼を送り出そうと独自のお葬式をするというもの。茨木高校の校舎をあますところなく使って物語は展開していきますが、日常を舞台にしながらファンタジックな演出も印象的に描かれています。何度もお葬式を経験してしまうという本来は悲しい経験を、温かさを持って表現している点も本作の魅力になっていて、川端康成の原作を改めて読んでみたくなる映画です。
故人との思い出を振り返るという設定の中でラブストーリーの要素も出てきますが、特別デート向きという内容ではありません。ただ久々に地元で同級生が集まり、懐かしい話に華を咲かせる様子を観ていると、地元の話をしたくなるので、相手の学生時代の話などを聞いてみたいと思う人は、誘ってみるのもアリではないでしょうか。
どちらかというと大人向けの作品ですが、子どももキーパーソンとして登場するので、キッズの視点なりの観方があるかも知れません。高校が舞台になっているので、ティーンの皆さんは逆に自分達が大人になって、今一緒にいる友達とどんな関係に将来なっているかなと想像しながら観るとおもしろいのではないでしょうか。
『葬式の名人』
2019年8月16日茨木市先行公開、9月20日より全国公開
ティ・ジョイ
公式サイト
©“The Master of Funerals” Film Partners
TEXT by Myson