これは個人的にいろいろな意味ですごく胸に刺さりました。本作は東京を舞台に繰り広げられる13人の若者達の群像劇で、仕事や学校、夢や恋愛のことなど、キャラクターそれぞれに理想と現実との狭間でもがく姿が映し出されています。誰に特に感情移入するかは観る方それぞれで異なると思いますが、状況が違えど誰にでも通じる普遍的な葛藤が描かれている点では、必ずしも自分に近いキャラクターが見つけられなくても共感できると思います。
真逆なキャラクターとして対比が描かれるシーンもあれば、似た者同士が並べて描かれるシーンもあったり、人間を深く洞察して作られている印象があります。さらに脳裏に残るセリフも多数で、その多くを占める哲学的な言葉が、巧みに若者達の心情を正確に表現しています。そんな若者達が悶々としている様子は観ていて辛くなる部分もありますが、最後には皆自分なりに答えを見つけていくので、希望ももらえるストーリーと言えます。人間の醜いところをありのままに描くことで逆に美しさが際立つようなコントラストもあって、ビジュアル的な面だけでなく物語の構成、演出としても見事です。
実力派の若手俳優が勢揃いしている点でも魅力的で、彼らが演じるキャラクターも皆愛おしい存在として描かれています。若い方はもちろん、大人も初心に返るきっかけにできると思うので、ぜひ観てみてください。
さまざまな恋愛模様が描かれているので、自分達に似たような関係性のカップルが出てきた時に多少なりとも影響を受けるかもしれません。作品全体的に自然に自分を見つめ直すきっかけになるようなストーリーとなっているという点も含めて、1人でじっくり観るほうが向いている作品ではないでしょうか。
ティーンの皆さんにはどんぴしゃな作品だと思います。登場人物の中には皆さんと同世代もいれば、少し年上くらいのキャラクターもいて、等身大で共感できる部分、将来をシミュレーションさせる部分の両方があります。社会の厳しさに直面させられる部分はありますが、自分ならどうするかを考えるきっかけにできるので、自分の価値観を整理するのに良いでしょう。
『スパゲティコード・ラブ』
2021年11月26日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会
TEXT by Myson