デヴィッド・ボウイがスーパースターであることは知っているし、ミュージシャンの彼がどんなスタイルだったのかというのは写真などで見たことがあり、映画出演作はいくつか観ていますが、どんな歌を歌っているのかは知りませんでした。本作は“ほぼ真実に基づく”とされていますが、私は背景をほぼ知らない状態で観たので、彼にこんな背景があったのかと驚きました。音楽に詳しい方には周知のことなのかもしれませんが、これは彼の華々しいサクセスストーリーではなく、彼がいかに苦しみながら歌手としての自分を見出したかというストーリーとなっている点で彼を知らない方にとっても共感しやすい内容になっています。
本作を観ると、彼がなぜ個性的なファッションをしているのかということ、彼の音楽に漂う悲壮感や混沌が何から生まれているのかということ、彼の音楽にはある大切な人に対する愛と哀しみや彼自身の恐れが表れていることが伝わってきて、歌詞にも一層興味が湧きます。また、私達が目にするスターの姿とは裏腹に、劇中では彼のとても内気で繊細で優しい面が印象的に描かれていて、そのギャップに驚かされます。ただそのギャップこそがデヴィッド・ボウイを生み出したということがストーリーを通してわかり、苦しみに耐えて生きる1つの方法なのだと思うと私達にも身近な物語のように感じます。ネタバレになるので具体的な言葉などは書くのを控えますが、精神的に苦しみを抱えながら日々を過ごしている時に少し希望をもらえる部分もあると思います。実在のスターの物語ということも魅力ですが、いち人間の苦悩の物語として広く観て欲しいです。
型にはまらない夫婦関係でありながら、やはりどんな夫婦にも共通していそうな普遍的な内容も描かれているので、「自分達は特異な付き合い方をしている」というカップルは特に客観視できるところがあると思います。また、劇中で描かれるデヴィッド・ボウイの対応には意外性もあり、ミュージシャンのステレオタイプな恋愛にそのまま当てはまらない部分もあるので、彼の優しい一面にも注目して観ると、2人の関係を維持するヒントが少し見つけられるかもしれません。
思春期あたりになってくると、思考もだんだん複雑になり、いろいろな悩みが出てくると思います。そういった時期になってから観たほうが一層感情移入できるのではないでしょうか。デヴィッド・ボウイ自身を知らずに観ても楽しめると思いますが、デヴィッド・ボウイ本人がどんなミュージシャンかを少しだけ調べてから観ると、より興味が増すと思います。本作で興味を持ったら、実際に彼の曲なども聴いてみてはどうでしょうか?
『スターダスト』
2021年10月8日より全国公開
PG-12
リージェンツ
公式サイト
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TEXT by Myson