女性だと娘目線で観られるからこそ、シングルファザーの大変さが伝わってきます。母親でも子育てはすごく大変というのは当然のこととしつつ、生物学的な違いによる感覚というのも、子育ての要領に関わってくるのかなと想像すると、赤ちゃんから男性が一人で子どもを育てることの大変さは計り知れません。少し大きくなったらなったで、子どもも知恵が付くからこそ辛い思い、寂しい思いが増したり、時間の経過とともに、それぞれの年代での子育ての苦労がリアルに描かれています。同時に、母親の死をどう受けとめているか、父親の先の人生をどう考えているかなど、子どもの目線から大人の姿がどう見えているかも描かれていて、父と娘という関係だけでなく、それぞれ一人の人間としての生き方が語られている点で、作品の奥深さを感じます。また、亡き妻の両親との関係にも触れることで、結婚とはどういうものか、子どもを持つとはどういうことかを、違った角度から見せてくれます。一言で表すと、妻を亡くした夫の苦労話ということになりますが、大切な人に先立たれた人達が力を合わせながら前を向いて強い足取りで生きていく、明るく温かいお話です。老若男女に通じるストーリーだと思います。父親を演じる山田孝之も良かったし、それぞれの年代を演じる子役達の名演も見ものです。
愛妻を亡くした夫のその後を描いた本作には、第二の人生をどう生きるかという場面も出てきます。「今一緒にいる相手は私がいなくなったらどうするんだろう?」と考えずにはいられませんが、愛する人の存在はぶれないので、共感しながら観られると思います。家族観を問う内容でもあるので、これから結婚しようとするカップルにもオススメですよ。
お父さん、お母さんがいるのは、当たり前のことではありません。いなくなることを想像すると悲しくなるし、想像したくないと思いますが、自分のことでなくても、そういう状況の友達がいたら、その友達の気持ちを少し想像するきっかけにできると思います。子ども目線でも観られる作品で、親に対する気持ちを改めて整理できる部分もあるでしょう。親子で観て、普段言えないことを話すきっかけにするのも良さそうです。
『ステップ』
2020年7月17日より全国公開
エイベックス・ピクチャーズ
公式サイト
© 2020映画『ステップ』製作委員会
TEXT by Myson