良い意味で思っていたのと違うストーリーで、ラストは「あ〜ら〜ま〜」と複雑な気分になる作品です。親元を離れ、フランス、マルセイユの大学に進学した娘(アビゲイル・ブレスリン)がある事件で殺人罪に問われてしまい、その父親(マット・デイモン)はアメリカのスティルウォーターという町からマルセイユにやってきます。面会で娘は無実を訴え、ある人物を調べて欲しいと弁護士宛の手紙を父に託しますが弁護士は取り合ってくれません。娘をがっかりさせたくない彼は、父としての信頼を取り戻すべく独自に動き、意外な真実にたどり着くというストーリーです。
「海外で女子大生が殺人罪に問われるって、どういう状況?」「被害者は娘の親友だったのに、殺したとするならなぜ?」「やっぱり真犯人がいるんじゃない?」など、観ている間いろいろな疑問が湧いてきます。また、父が真実に迫ろうと奔走するなかいろいろな人物に出会いますが、そこには偏見や差別、部外者のいい加減さが見える点で、ただの真犯人捜しではなく社会を映し出した物語として見応えがあります。全部観終わった後に、最初のほうの何気ないシーンがすごく意味を持ってくるので、起承転結の「起」の部分も気を抜かずに注意深く観てください。
意外なところでロマンチックな展開も生まれてきて、マット・デイモンが演じる主人公の心の変化に強く影響を及ぼします。カップルで観ると、自分があの立場になったらどうするかと考えてしまうシーンが出てきて、理想と現実の違いを客観視できると思います。そういった部分を鑑賞後に述べあうとお互いの価値観がわかるので、それを期待する方は敢えてデートで観るのも良いのではないでしょうか。
父と娘のストーリーが軸となっているので、大人目線、子ども目線、それぞれ共感できるところがあると思います。それぞれが家族には見せない一面も描かれているので、親子で観たらどんなムードになるのか読めませんが(笑)、鑑賞後は普段言えないことを打ち明けるきっかけにできるかもしれません。
『スティルウォーター』
2022年1月14日より全国公開
パルコ、ユニバーサル映画
公式サイト
© 2021 Focus Features, LLC.
TEXT by Myson
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