近所に住む警察官を連続殺人だと疑う少年達の物語で、少年達が圧倒的に不利な状態だからこその怖さが描かれています。殺人鬼が登場するホラーとしての怖さよりも、疑う相手がご近所さん、そして警察官であるところ、彼を疑っているのは子どもというところで、どんなに訴えても大人に真剣に取り合ってもらえない時の子どもの恐怖を考えるとすごく怖いです。ご近所さんだから波風が立たないようにするのも大事ですが、子どもの本気の訴えにはちゃんと耳を貸すべきだなと感じさせられるストーリーで、大人こそ観たほうが良い内容です。
日本で知名度が高いと言えるキャストは出ていませんが、主演のグラハム・バーチャーをはじめ、少年役の4名は既に映画や海外ドラマで活躍していて、これから注目される人も出てきそうです。警察官を演じたリッチ・ソマーは海外ドラマ『マッドメン』で印象に残る役柄を演じていたので記憶にある人もいるのではないでしょうか。映画にもいろいろ出演していますが、今回とても不気味な役柄を演じているので、その辺りも楽しんでください。
舞台は1984年ということで、『E.T.』『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』など少年達が主人公のストーリーや、『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』など1980年代に量産されたヒットしたホラー作品へのオマージュも感じられる内容になっているので、1980年代の映画を観て育った年代のカップルは、懐かしさも味わいながら楽しめると思います。スプラッターホラーというよりも心理的怖さが際立つ作品なので、そういうタイプなら観られるという人は誘って観ても良さそうです。
少年達が主人公なので、皆さんの世代は等身大で怖さを体感できると思います。必死に訴えても大人に真剣に取り合ってもらえないもどかしさや、危ないことだとわかっていても好奇心が抑えられない感覚など、共感できるポイントはいろいろあります。未成年の場合は大人の意見を一旦聞くのも大事ですが、それでも自分達が正しいと思ったら、闘わないといけないですよね。どうやったら自分達の主張に向き合ってもらえるのか考えながら観ると有意義でしょう。
『サマー・オブ・84』
2019年8月3日より全国順次公開
ブロードウェイ
公式サイト
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TEXT by Myson