スイング・ステートとは選挙の激戦州のことで、本作は架空の小さな町、ディアラケンを舞台に、アメリカの民主党と共和党の代理戦争ともいうべき選挙の表と裏を描いています。一見スティーヴ・カレルが演じる選挙参謀ゲイリーと、ローズ・バーンが演じるフェイスの知恵比べのようなストーリーですが、それだけで終わらないのが本作の魅力。ネタバレになるので書きませんが、クライマックスで明かされる真相にニンマリすると同時に、思わぬ政治の穴に気付かされハッとさせられます。
そして、選挙は誰のためにあるのかを改めて考えさせられる一方で、スティーヴ・カレルとローズ・バーンのやり取りがコミカルに描かれていて、誇張されているにしても、こんなバカバカしいことが人々の生活や未来の行く末を決める選挙で行われているのだろうという皮肉がたっぷり効いています。政治の問題は万国共通です。本作はエンタテインメントとしておもしろい上に勉強にもなる内容なので、こういった作品をきっかけに日本でも政治への関心が少しでも高まれば良いなと思います。
ちょいちょい下ネタが出てくるので、ウブなカップルは敏感に反応してしまうと気まずいかもしれません。ラブストーリーというか、いろいろな意味での男女の駆け引きは出てきて、ロマンチックなムードになるようなタイプの映画ではありません。ただ、映画そのものは軽快でコミカルなので、多少の下ネタは大丈夫というカップルはデートで観るのも良いのではないでしょうか。
小学生にはまだ難しい部分もありそうですが、中学生以上の皆さんは社会勉強にもなるのでぜひ観て欲しいと思います。下品な下ネタが出てくるところは、さらっと笑い飛ばして、政治の仕組みなどに注目して観るとおもしろいです。国によって法律が異なる部分もありますが、いろいろな人にとっての選挙の意味を知るきっかけになるでしょう。
『スイング・ステート』
2021年9月17日より全国公開
パルコ、ユニバーサル映画
公式サイト
©2020 Focus Features, LLC.
TEXT by Myson