本作は、富裕層が娯楽として人間狩りを楽しむというとんでもない内容で、全米では1度公開中止となった問題作です。ただ、とんでもない内容とは言いつつも、その根底には社会問題に疑問を投げかける意義が感じられて、これまた名プロデューサー、ジェイソン・ブラムが手掛けた作品として期待を裏切りません。そのストーリーはというと、人種差別、格差社会によって、分断されつつあるアメリカの未来に危機感を抱かせる内容で、単純に肌の色やルーツによる差別だけではなく、ネット社会になったことで、個々の思想をSNS等で発信することが危機を招いたり、噂やただの推論が暴走してしまうことで新たな問題を引き起こす怖さを描いています。
でも、テーマがこれだけ社会派でも、それで終わらないのが本作の魅力。「これは主要キャラクターだろう」と予想しながら観ていてもことごとくそれが裏切られるし、豪快でユーモアのあるシーンも満載です。グチャっとなったり、パシャッとなるのはもちろん、グサッ、ズドン…というシーンも容赦なく出てくるので、ビジュアル的にもとても刺激的です。私は時々目を塞ぎたくなりながらも、ところどころ笑いながら観ましたが、どういうスタンスで観ることになるかは個人差があるでしょう。そういう振り幅の大きさも含めて楽しめる作品です。
好き嫌いがはっきり分かれそうな作品ではあると思うので、初デートで誘う人がいたら、かなりのギャンブラーだなと思います(笑)。初っぱなから痛々しいシーンがガンガン出てくるので、相手の苦手分野を確認してから誘うかどうか決めると良いでしょう。でも、これが2人とも楽しめるなら、相性がかなり良いように思います。ご自身が映画好きで、相手にもそれを求める人は、相性を占う1つの指標として一緒に観てみるのもアリかもしれないですね。
R-15なので15歳だったら観られるのですが、かなり刺激的なので、激しい映画を観慣れていない人はちょっと覚悟が必要でしょう。すごい緊張感の中に突如出てくるアホらしさに笑えるシーンもあるのですが、大人向けのブラックジョークかなという感じなので、若い皆さんがどこまでコメディ感も堪能できるかは読めません(苦笑)。でも、このおもしろさがわかってくれたら、いち映画好きとして嬉しいです。
『ザ・ハント』
2020年10月30日より全国公開
R-15+
東宝東和
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TEXT by Myson