感情がない少女アマンダと、感情的な少女リリー。幼馴染みながら長らく疎遠だった2人が再会し、また徐々に親密になっていくにつれ、2人の関係性が変容していく様がスリリングに描かれています。一見すると、感情がないアマンダは冷静な分、感情的なリリーをリードするのは自然ですが、そんなに単純にいかないところがこのストーリーのおもしろいところ。それぞれのキャラクターに感情移入しながら観るのも楽しめるし、客観的に2人の関係を観て、人間の理性と感情の必要性やバランスを観察するような観方もできます。女子独特の奇妙な絆、共依存もリアルなだけにゾッとしてしまうと同時に、お互いに欲しいもの、必要なものがわかっている2人だからこその独特な結末が予想外の達成感をもたらし、観る側はある種の困惑を味わえます。私はこういう後味の映画が結構好きですが、一般的には好きか嫌いかは分かれそうですね。また本作には、2016年に27歳という若さでこの世を去ったアントン・イェルチンが出演している点も映画ファンに注目して欲しいところ。そして主演のオリヴィア・クック、アニャ・テイラー=ジョイの鋭い演技も見ものです。
女性はすごくわかる部分が多いと思いますが、男性がどんな感想を持つのか、想像しづらいストーリーです。男女のもつれ的な話題ではない分、そういう気まずさはありませんが、鑑賞後にお互いに映画に共感するかどうかは読めません(笑)。なので、女子同士で行くか、1人で行くほうが向いている作品のように思います。
キッズやティーンの皆さんには、こういう友人関係がすごく身近に感じられると思います。もう子どもではないけれど、大人になりきってないからこそ自由が利かないフラストレーションや、それをどうぶつけてよいのかわからずに悩んで暴走してしまう感覚は、実際の行動に結びつくところまでいかなくても、誰もが一度は感じたことがあるはずです。アマンダとリリーの関係や、2人が選んだ結末は反面教師的な部分もありますが、苦しんでいるのは自分だけではないと思わせてくれる部分もあるでしょう。
『サラブレッド』
2019年9月27日より全国公開
PG-12
パルコ
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TEXT by Myson