『僕たちの家に帰ろう』のリー・ルイジュン監督が手掛け、ベルリン国際映画祭で大きな話題を呼んだ本作。物語の舞台は中国西北地方の農村。貧しい農民のヨウティエ(ウー・レンリン)と内気な性格のクイイン(ハイ・チン)は、それぞれ家族から厄介者扱いをされており、家族の勝手な話し合いから結婚をすることになります。夫婦となった2人は、力を合わせて作物を育て、何とか生計を立てていきます。
2人共大人しい性格なので最初は夫婦間の会話も少なく、観ていて少し心配になります。でも、季節が過ぎ、作物が育つにつれて、2人の心の距離も少しずつ近づき、お互いを想い合っている様子が伺えます。ある大雨のシーンでは、ヨウティエが作ったレンガを保護するために2人でずぶ濡れになりながら作業をしていて、とても大変な状況にも関わらず2人が楽しそうに笑っているシーンは特に心に残ります。他にも2人の優しい人柄が出ている愛にあふれたシーンがたくさんあり、夫婦関係や愛について考えるきっかけにもなります。
貧しい2人がひたむきに頑張り生活を送る一方で、心ない人達が自分の利益のためだけに2人に近づいてくる場面はとても切なくなります。そんな思いやりに欠けた人達とヨウティエ達との対比も印象的です。結婚経験のある方はもちろん、人間の大きな愛についても考えさせられる作品なので、多くの方に観て欲しい1作です。
本作の夫婦の姿を通して、結婚観や理想の夫婦像を考えるきっかけになるのではないでしょうか。ヨウティエとクイインはお見合い結婚をし、最初はぎこちない雰囲気が漂っています。でも、時間の経過と共にと少しずつ心を通わせていく様子はとても微笑ましいです。そんな2人の姿を観ていると、純粋に相手を想い、気遣うことの大切さも感じられるのではないでしょうか。
上映時間133分と長めで、静かなトーンで夫婦関係が描かれているので、中学生くらいになってから観たほうが集中して観られると思います。ティーンは、ヨウティエとクイインの夫婦関係と共に、2人を取り巻く周囲の人達の対応にも注目して観てください。また、ヨウティエとクイインが貧しいながらも小さな幸せを見つけていく姿はとても素敵なので、これを機に皆さんにとって幸せとは何か考えてみるのも良いと思います。
『小さき麦の花』
2023年2月10日より全国順次公開
マジックアワー、ムヴィオラ
公式サイト
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TEXT by Shamy