REVIEW

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』ジェシー・アイゼンバーグ

今もパントマイムの神様として世界的に知られるマルセル・マルソーは、マイケル・ジャクソンのムーンウォークなど、世界中のアーティスト達に影響を与えたとされています。本作は、そんなマルセル・マルソーが若かりし頃にナチスに親を奪われた大勢の子ども達を救った実話を、生き証人となった彼の従兄弟でレジスタンス組織のリーダーだったジョルジュ・ロワンジェの話を基に映画化したものです。マルセルは2007年に84歳で亡くなり、ジョルジュは2018年に108歳で亡くなっていますが、監督、脚本、製作を務めたジョナタン・ヤクボウィッツ監督はジョルジュが亡くなる前に直接会うことができ、本作の大部分はジョルジュの話に基づいて作られているとのことです。
本作では、俳優を目指しながらも日の目を見ないでいたマルセルが、従兄弟のジョルジュから親を失った子ども達を楽しませて欲しいと依頼され、最初は渋々ながらも使命に目覚めていく姿が描かれています。家族からはいつも自分中心だと言われていたマルセルがなぜ命を危険にさらしてまで多くの子ども達を救ったのか。彼のパフォーマンスとそれに反応する子ども達の姿を観ていると、まさにこれが芸術の力だなと実感でき、人間の底力に希望をもらえます。そして、ユダヤ人の多くが無残な方法で殺されていくなか、本当の報復とは何かを語る彼の言葉はとても重く、人間としての尊厳を失わず立派に生きようとする意志に胸を打たれます。
さらに、ヒーローという柄ではない素朴な青年が真の優しさと強さを発揮する姿(マルセル)をジェシー・アイゼンバーグが見事に演じているほか、マティアス・シュヴァイクホファーが冷血でありながら1人の父親としての顔を持つキャラクターを迫力のある演技で体現しています。
マルセル他レジスタンスの人達の闘う姿を観て勇気づけられ、人としての生き方を問うきっかけをもらえるのはもちろん、いつの時代も子ども達が希望の光であること、そして辛い時こそ芸術が必要であることを痛感するストーリーです。ぜひ多くの方に観て欲しいです。

デート向き映画判定
映画『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』ジェシー・アイゼンバーグ

ナチスドイツ政権下で行われていたユダヤ人迫害の様子やそれ以外にも同性愛者などが迫害されていた実状が描かれていて、重い内容ではありますが、自分だったらこういう苦境でどういう考え方をして、どういう行動を起こすのかを考えながら観ることができます。なので、鑑賞後の会話でお互いの価値観が見えると思います。ぜひ共有して欲しい要素があるので、デートでもオススメです。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』ジェシー・アイゼンバーグ

皆さんは子ども達の目線で観られると思います。苦境に立たされている時は誰もが自分のことでいっぱいいっぱいになりますが、そういう時にでも考え方1つで生き方が変わることがわかると思います。簡単に真似できることではありませんが、お手本となる姿が描かれているのでキッズやティーンの皆さんも観てみてください。

映画『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』ジェシー・アイゼンバーグ

『沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~』
2021年8月27日より全国公開
キノフィルムズ
公式サイト

©2019 Resistance Pictures Limited.

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP