本作の原作となる「騙し絵の牙」は、ミステリー小説「罪の声」の著者である塩田武士が、大泉洋を主人公にあてがきし、2018年本屋大賞にランクインした小説です。大泉洋が演じるのは、雑誌編集長の速水。彼が務める大手出版社は、出版不況による業績不振と、創業者の急逝で社内に混乱が起きています。そんななか、速水は担当している雑誌の巻き返しを計るというストーリーです。社内の保守派と革新派の攻防は、自分が渦中の人間だったらすごくストレスだろうなと思いつつ(苦笑)、映画で観ている分にはすごくおもしろくて、速水が繰り出すアイデアにワクワクさせられます。また、その背景には複雑な人間関係をかいくぐって仕事を成立させなければいけないというミッションもあって、相手を出し抜く方法の数々にゾクゾクさせられます。でも、やり手なのは速水だけではないのが見どころで、速水が職場を掻き回すことで、皆が必死に自分の意志やプライドを賭けて行動を起こし、結果切磋琢磨することに繋がっている点で共感を覚えます。
そして、ちょいちょい入ってくるクスッと笑えるシーンも魅力の一つで、豪華キャスト達の絶妙な演技も堪能できます。二転三転以上のどんでん返しが展開されるので、最後の最後まで気を抜かずに楽しんでください。
恋愛要素はほぼないので、初デートで観てもOKです。老若男女問わず楽しめる作品なので、どんなカップルにもオススメで、シンプルにエンタテインメントとして楽しむも良し、職場での悩みや、転職に悩んでいたりする人は、相手に相談するきっかけに観るのも良いと思います。保守派に共感しながら観るか、革新派に共感しながら観るかで、2人の価値観も探れるかもしれません。
出版社が舞台になっていますが、他の業界に置きかえても同じようなことがいえる部分は多々あるので、働く人に興味深い内容であるだけでなく、これから就職を考えるティーンの皆さんにも興味深い内容だと思います。職場の人間関係や、いち業種の仕組みの一例を見ることができるので、社会見学をするつもりで観るのもオススメです。騙し合いの行方を推理しながら観るのも楽しいので、友達を誘って観るとなお楽しめると思います。親子で行くと、自然に親の仕事や職場での話も聞けるので、社会人の生の声を聞くきっかけにするのも良いでしょう。
『騙し絵の牙』
2021年3月26日より全国公開
松竹
公式サイト
©2021「騙し絵の牙」製作委員会
TEXT by Myson