全体的にオシャレでアーティスティックな雰囲気が漂っていると思ったら、同作が初長編作品となる津田肇監督は、ファッションイベント演出家で映像作家ということで納得です。主演を務める三吉彩花、阿部純子の雰囲気もとても世界観に合っていて、ファッションや部屋のインテリアなども、女子が観ていて心地の良いムードに溢れています。2人でルームシェアをしている小春(三吉彩花)と彩乃(阿部純子)は親友同士で、とてもバランスが取れていますが、彩乃が妊娠したことで徐々に関係性が変わっていきます。仲が良いからこそ相手に怒りをぶつけたり、なかなか大事なことを言い出せなかったり、敢えて黙って見守ったり、親友独特の関係性、空気感がとてもリアルに描かれています。そして、2人はまだ若く、親友を大切にしたい気持ちと、自分も大事という葛藤があるのは当然で、自分ならどうするだろうと思いながら観て、どんどん物語に引き込まれていきます。この2人を観ていると、一見活発に見える小春のほうが”静”の役割を果たしていて、大人しく見える彩乃が”動”の役割を果たしているのが興味深く、人と人との繋がりに何だか神秘的なものを感じます。女性は特に、結婚したり、子どもができたりすると、付き合う相手も変わっていってしまい、淋しい思いをすることもありますが、こうやって皆大人になっていくんだなと思うと、一緒にいられる時があったことがとても幸せだと感じます。そんな思いに気付かせてくれる作品です。
親友あるある的なやり取りがたくさん出てくるので、デートで観るよりも、仲の良い友達と一緒に観たい作品です。でも、デートで観るとしたら、お互いの親友の話をするきっかけにできると思います。まだお互いの友達に会ったことがなければ、本作を機に友達の話をして、いつか会いたいと伝えるのもアリでしょう。親友しか知らないこともたくさんあるので、会える機会があったら、パートナーの知られざる一面を聞けると良いですね。
主人公2人は社会人ですが、親友同士のこの感覚は中高生くらいからあると思うので、ティーンの皆さんでもすんなり物語に没入できるでしょう。男子がどんな風に観るかはわかりませんが、女子同士の独特な空気もあれば、男女関係なく友達同士ならある感覚もリアルに描かれているので、誰が観ても共感できると思います。ずっと今と同じように一緒に仲良く過ごせると思っていても、いつかそれぞれ大人になっていきます。それでも大切な友達であることは変わりなく、友情は続くということに希望を持たせてくれるストーリーなので、ぜひ観てみてください。
『Daughters』
2020年9月18日より全国順次公開
イオンエンターテイメント、Atemo
公式サイト
©「Daughters」製作委員会
TEXT by Myson