何年も前に描かれた名画は世の中にたくさんありますが、本作を観ると改めて名画がホンモノなのかどうかというのは見極めが難しいことを実感します。本作は、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作とされながらも100年以上も行方不明だった“サルバトール・ムンディ”=通称「男性版モナ・リザ」が見つかったとされ、その絵を巡って美術界のさまざまな立場の人間達がホンモノか否かで議論し、その売買においても物議を醸した様子が映し出されています。
なんと一般家庭から見つかったとされるこの絵は最初日本円にして13万円で美術商に買われ、その後さまざまな過程を経て最終的に510億円という値が付けられます。なぜそんなことになるのかというと、絵がホンモノかどうかという議論だけではなく、それをビジネスで利用しようとする人々の目論見も絡まってきて、「ホンモノであったほうが都合が良い」という事情のもと価格が高騰していくのです。これはドキュメンタリーですが、信じられないような駆け引きが次々と繰り広げられていき、映画かドラマかなと思うような嘘のような本当の話が映し出されていて、映画としてはとてもおもしろいですが、美術界の実態に見える社会の構造になんとも複雑な気分にさせられます(苦笑)。
美術に興味がある方はもちろん、ビジネスの視点、投資家的な視点、マーケティング的な視点でも楽しめる作品なので、いろいろな角度から楽しんでください。
レオナルド・ディカプリオもこの絵の展覧時に訪れた客の一人としてちらっと映りますが、それだけ多くの人達がこの絵に興味を持っていることが本作を観るとわかります。本作を観る限りこの絵がホンモノか否かは未だに定かになっていませんが、この絵が辿る過程がとても興味深いので、誰を誘ってもそれなりに楽しんでもらえると思います。本作を観たら美術館に行ってみたくなるので、次のデートに誘う口実にも良さそうです。
映画やドラマによく出てくるお金持ちの代表格といえば、ロシアの大富豪やアラブの皇族が挙げられますが、現実を捉えたドキュメンタリーである本作でもロシアの大富豪やアラブの皇族が名画の売買に本当に登場するので、「マジですか!?」という目線で引き込まれます(笑)。トリッキーな駆け引きも取り上げられていてある程度の集中力と理解力が必要なの中学生以上向けかなと思います。ビジネスの仕組みの1つの例としても興味深いので、社会勉強の一環で観るのも良いでしょう。
『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』
2021年11月26日より全国公開
ギャガ
公式サイト
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TEXT by Myson