キービジュアルから、ポップで可愛い映画なのかと思いきや、良い意味で想像を裏切るストーリーで見応えがあります。エシー・デイヴィスが演じるバニーは、路上に立って車の窓拭きでコツコツとお金を稼いでいます。そして彼女は家に帰ると家主一家の世話をしています。ここまで観て、彼女はどういう立場なのだろうと頭の中は謎でいっぱいになるでしょう。他のキャラクターとのやり取りを観ていても、不思議に思うところが多々出てきます。彼女が抱える問題は物語が進むにつれて徐々にわかっていきますが、不可解に思えた点がどんどん伏線として繋がっていくので、ぜひ最初から注意深く観てください。
本作の主人公はバニーですが、バニーの姪トーニャ(トーマシン・マッケンジー)もキーパーソンです。叔母と姪という関係と2人の距離感もこの物語をドラマチックにする大切な要素となっています。親子ほど近過ぎない分、逆に気付くところもあるといおうか、親戚だけど戦友のような関係がとても素敵です。2人の一生懸命な姿を観ていると、なぜささやかな幸せすら叶わないのかもどかしくなります。でも、最後は清々しい気持ちにさせてくれる作品です。
交際相手の良からぬ一面を周囲の親しい人から指摘されている方は、最終的に誰を信じる、何を信じるかは別として、状況は違えど、本作を観ると物事を冷静に考えるきっかけになるかもしれません。なので本作はデートで観るよりも、仲の良い友人と観るか、1人でじっくり観るほうが良いのではないでしょうか。
本作には、子どもとの約束をどうにかして守ろうとする母(=主人公)の必死な姿が描かれています。「そこまでして…」と思えるくらい必死な母の姿を観ていると、子どもってこんなに愛されてるんだなと実感できます。本作の主人公は諸事情で社会的には問題児のように扱われますが、真相は違います。本作は、ちゃんと自分の目で人を見極めることが大事だということも教えてくれるでしょう。
『ドライビング・バニー』
2022年9月30日より全国公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト
© 2020 Bunny Productions Ltd
TEXT by Myson