主な登場人物は高校銃乱射事件で息子を失った2組の両親。片方は被害者の両親、一方は加害者の両親です。息子を失ってから6年経っても傷が癒やされない、被害者の父ジェイ、母ゲイルは、セラピストの勧めで加害者の両親リチャードとリンダに会うことにします。教会の中にある一室で対峙する4人。ジェイとゲイルは詰問にならないよう心がけ、ただ真実を知りたいと切り出します。でも、当然最初はぎこちない空気が流れます。
会話のぎこちなさ、一髪触発の緊張感がとてもリアルで、観ているこちらも心穏やかには観られません。被害者の両親は、加害者の両親が事件を未然に防ぐことができなかったのかという態度を見せ、そこから親としての役割の難しさ、責任の重さを表す本音が徐々に炙り出されていきます。被害者の両親、加害者の両親で立場が違えど、同じ親として、語られる言葉にさまざまな感情が込められていて、この問題の複雑さを感じます。最後の最後まで、どう決着がつくのかわからない展開で、とても重厚な会話劇となっています。セリフの一つひとつと、受け応えで一瞬にして空気が変わる展開が見事で、そこに教会のスタッフがソワソワする様子も相まって、第三者としてもこういった問題にどう向き合えばよいのかという戸惑いを体感できます。
フラン・クランツ監督の脚本と演出、リード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトンの演技力にも圧倒させられます。子どもを持つ方はもちろん、多くの方に観て欲しいです。
終始緊張感があり、物語にすごく引き込まれるので、じっくり1人で観るほうが向いている作品だと思います。ただ、とても考えさせられる内容で一生を共にする相手と共有しておくと良い内容ともいえます。真剣交際中の相手や夫婦なら一緒に観て感想を語り合うことで、改めてお互いの人生観を知るきっかけにできそうです。
ティーンの皆さんは、親達が子ども達に対して感じている複雑な心境を知ることができます。普段は素直になることが難しくても、面と向かって話すことや普段の態度ではわからない親達の本音を知って、少し気持ちを開いてみようかなと思えるかもしれません。言いづらいことがあるならば、親子の会話のきっかけに一緒に観るのも良さそうです。
『対峙』
2023年2月10日より全国公開
トランスフォーマー
公式サイト
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TEXT by Myson
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