REVIEW
第72回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で見事金熊賞を受賞した本作は、時代の大きな変化に戸惑う桃農家を営む大家族が主人公の物語です。監督は、初長編監督作『悲しみに、こんにちは』でベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞とジェネレーション部門グランプリを受賞したカルラ・シモンが務めています。
物語の舞台はスペインのカタルーニャ。3世代にわたり桃農家を営むソレ家は、地主から立ち退きを迫られています。今育てている桃の収穫が終われば、土地を明け渡さなければいけない状況で、家族それぞれが複雑な思いを抱きながら、日々を過ごしています。
淡々と描かれるソレ家の人々の日常は、何気ない日常に見えつつも、一人ひとりの心が揺れ動く様が生々しく映ります。大人達は根本的には仲が良いものの、生活を守るための価値観はさまざまで、きょうだい同士の衝突もあります。また、子ども達も一時的とはいえ、親同士の不和に敏感で、静かに傷付いている様子がうかがえます。伝統を守りたい、プライドを持っている仕事を守りたい、家族を守りたい、どの思いもわかるし、誰も悪くない状況なので、それぞれのキャラクターに共感を抱きます。
でも、ぶつかり合っても家族の絆は強固です。ストレスフルな状況を乗り越えていく様子を観ると、やっぱり家族なんだなと思えて、心が温かくなります。環境は違えど、私達も社会の大きな変化に影響を受けます。本作は自分ならどう折り合いをつけるのか、考えるきっかけになります。
デート向き映画判定
本作では、それぞれに所帯を持ったきょうだい間のやり取りが生々しく描かれているので、親戚同士で揉めていたり、不和がある夫婦の場合は、心穏やかに観られないかもしれません(苦笑)。なので、冷静に思考の整理をしたい方は、1人で観るほうが良いでしょう。
キッズ&ティーン向き映画判定
本作は心の動きを丁寧に描いた作品です。逆にいえば、日常の自然なやり取りを淡々と映していて、見た目に派手な展開がないので、まだ映画を観慣れていない方にはピンとこない部分もあるでしょう。逆に、人間観察が好きな方には見どころが詰まっています。また、ティーンの皆さんは、思春期のキャラクターの心情に共感できるところがあるでしょう。親に理解してもらえないもどかしい気持ちを誰もが経験するとわかります。
『太陽と桃の歌』
2024年12月13日より全国公開
東京テアトル
公式サイト
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TEXT by Myson
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情報は2024年12月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。