土佐の坂本龍馬、岩崎弥太郎、長州の伊藤博文らと共に、明治維新に大きく貢献した五代友厚(元の名:五代才助)の物語。彼は江戸末期にペリーの黒船来航で揺れる日本で、誰よりもはるか先の未来を見据えて、刀ではなく頭を使って、日本を変えようとしていた人物です。タイトルにある“天外者(てんがらもん)”とは、「凄まじい才能の持ち主」という意味だそうですが、前半は日常の場面で才助がずば抜けた頭の良さを発揮する姿にワクワクさせられます。でも、国を変えるとなると次元が違います。後半は身の危険を冒して人々のために貢献しますが、名声やお金のためではなく、純粋に「誰もが夢を見られる国にしたい」と思って地道に行動しているところが、なお彼のカッコ良さを際立てます。そして、“頭を使って”とはいえ、多くの人に疎まれて、命を狙われることもしばしば。それでも人を殺さずに倒していく文武両道である点も魅力的に描かれています。さらに、頭が良く気立てが良いキャラクターが、三浦春馬のイメージにピッタリで、人間味と暖かみのある人物像が体現されています。観ているうちに「こんなに頑張ってるのに…」という気持ちになってきますが、最後の最後にジワッとさせられて、彼の思いや意志が受け継がれていることを知らされます。だからこの映画ができたんだなというところにも繋がってくるのですが、彼のような人が時代に1人でもいてくれたことで今の私達があると思うと、夢を捨ててはいけないなと前向きになれます。
ラブストーリーの要素もあり、時代物としても観やすいので、デートで観るのもアリでしょう。下心ではなく良心から女性に接する才助の態度も、男性にとっては参考になるはず(笑)。まずはお友達から関係を始めたい人も、才助が辿る恋愛を観て、こうやって全然違う世界にいた人同士でも徐々に心は近づいていくんだなと客観視できると思います。
明治維新に詳しくなくても誰もが知っているレベルの歴史上の人物が出てくるので、今まさに学校で歴史を学んでいるティーンの皆さんなら余計に興味が湧くと思います。日本史に詳しい人と行くなら、鑑賞前か後に解説を聞くと、より一層理解が深まり楽しめるでしょう。もしくは、映画の公式サイトの人物相関図やイントロダクションを事前に見ておくだけでも、だいぶわかりやすくなります。映画自体が歴史の理解の一助になるのはもちろん、五代友厚自身の生き様を観ると、「勉強って大事!」「勉強って役に立つ」「勉強できるって貴重なこと」と思えて、日頃の勉強へのモチベーションも上がるかもしれません。
『天外者』
2020年12月11日より全国公開
ギグリーボックス
公式サイト
© 2020 「五代友厚」製作委員会
TEXT by Myson