物語の舞台は、第二次世界大戦直前のイギリス。未亡人のエディス・プリティ(キャリー・マリガン)は、自らが所有する土地にある墳丘墓を発掘するため、アマチュアの考古学者バジル・ブラウン(レイフ・ファインズ)を雇います。本作は実話を基にしており、エディスとブラウンが歴史に残る大発掘を成し遂げた様子を綴っています。世紀の発見に至った経緯もドラマチックですが、本作にはエディスやブラウンをはじめとしたキャラクター達が時代に翻弄されて生きている姿も印象的に描かれています。戦争の影が常に生活に影を落としているのはもちろん、学問の世界の権力構造も今よりもっと権威主義的で、ブラウンは子どもの頃から発掘の仕事を覚え経験も知識も豊富ですが、学位がないというだけで、他の学者から軽んじられたり、手柄を奪われたりする様子が描かれています。実際に本作で描かれているサットン・フーの宝の発掘に関して、バジル・ブラウンが発見者であることは近年明かされたばかりというところにその名残が感じられます。だからこそ、こうして発掘の真相を描いた映画ができて良かったと思えて、本作にはバジル・ブラウンの人柄の良さがすごくにじみ出ているので、観終える頃には誰もが彼の功績が世に伝えられたことを嬉しく思えるはずです。何のために仕事をしているのか、自分の存在価値は何なのかと悩んでいる人には一層共感できるストーリーです。ちょっぴり切ないですが、とても穏やかな気持ちになれますよ。
恋愛も時代に縛られていたということが感じられるシーンがいくつか出てきます。自分が望んだ状況を手に入れたと思いきや、現実を突きつけられて、自分の生き方を見つめ直すキャラクターもいて、主軸のストーリーと並行して、気になる恋愛も後半描かれていきます。そこにフォーカスして観た時に似たような境遇にある人がどっちに転ぶかは予測不可能。時代背景が異なるので、自分達にリンクすることはないかもしれませんが、薄々今の交際に疑問を感じながらもずるずる付き合っている人は1人で観ていろいろじっくり考えるきっかけにするほうが良さそうです。
エディスの息子ロバートも物語の鍵を握っていて、キッズやティーンの皆さんは彼の目線で観ると感情移入しやすいでしょう。もちろんブラウンの目線で観るのもアリです。皆さんの中にも一生懸命1つのことに打ち込んで成果を出したのに、手柄を取られたり、なかなか実力を認めてもらえなかったりという経験をした人がいると思います。そんな状況のなかでもめげずに続けるにはどんな考え方をすれば良いか、参考になる部分があるでしょう。
『時の面影』
2021年1月29日よりNetflixにて配信中
12歳未満には保護者の助言・指導を推奨
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TEXT by Myson