宝くじで19万ドル(2500万円)を当てた、シングルマザーのレスリー(アンドレア・ライズボロー)は酒に溺れ、6年後にはモーテルを追い出されてしまいます。一人息子のジェームズ(オーウェン・ティーグ)は既に独立していて、レスリーはジェームズの所に一時的に身を寄せます。ジェームズはとても優しくて、母を心配しています。でも、酒を断つというジェームズとの約束を果たせず、レスリーは強制的に地元に追い返されてしまいます。本作では、そんなレスリーが再起できるのか否かが描かれています。
レスリーはアルコール中毒になっていて、宝くじで当てたお金はとっくに底をついているのが見てわかります。仕事もなく、フラフラしていて、彼女に生活を立て直そうとする気配は全くありません。せっかく手を差し伸べてくれた人達も裏切り、本当に行き場のない状況まで落ちてしまいます。だから前半は私達観客にも彼女の未来が全く見えません。同時に、私達は彼女から目が離せなくなります。
ただ、彼女にはほんの少しだけ運が残っていたのです。彼女と周囲の人物を観ていると、私達が生きる現実世界では、劇的な奇跡が起こるのではなく、自分の周りに舞い降りてくる小さな奇跡に幸せの鍵が隠されていて、その奇跡にいかに気付くことができるかが運命の分かれ道なのだと感じます。彼女がいつ小さな奇跡の積み重ねに気付き、どう変化し、どんな未来を掴むのか、ぜひご覧ください。レスリーを演じたアンドレア・ライズボローの名演も必見です。
絶望の淵に立たされた女性が再起を図る物語です。じっくり1人で観るのも良し、カップルで観るのも良しの作品です。ロマンチックな展開はそれほどありませんが、人との関わりの大切さを実感させられる内容なので、パートナーが人間関係に疲れていたら、一緒に観て心をほぐしてあげるのも良さそうです。
キッズにはまだピンとこないかもしれませんが、ティーンの皆さんは息子ジェームズの目線で共感できるのではないでしょうか。親が働かずにお酒ばかり飲んでいる状況は子どもにとって、とても辛いでしょう。子どもへの愛情が見えなくて余計に辛いかもしれません。でも本作を観ると、子どもの存在が思った以上にお母さんにとって重要であるかが伝わってくるので、少し元気と希望をもらえると思います。
『To Leslie トゥ・レスリー』
2023年6月23日より全国公開
KADOKAWA
公式サイト
© 2022 To Leslie Productions, Inc. All rights reserved.
TEXT by Myson