ダルデンヌ兄弟が監督を務める本作は、第75回カンヌ国際映画祭で75周年記念大賞を受賞しています。物語の主人公は血の繋がりがないものの姉と弟として生きるトリとロキタ。祖国を離れてベルギーへやってきた2人の目下の課題はビザ取得。弟のトリは既に取得できることになった一方で、ロキタにはなかなかビザが下りません。さらにロキタは祖国の家族に仕送りしなければならず、やむなくドラッグの運び屋をしています。そんななか、さらに経済的に追い込まれる事態になったロキタは、闇の仕事に誘われます。そして、いつも一緒にいた2人はしばらく離れることになったことで、トラブルを引き起こすことになります。
ここからは本編でご覧いただくとして、本作を観ていると、まだ子どもながらもお互いに支えながら必死に生きるトリとロキタを応援せずにはいられません。同時に、これほど過酷で理不尽な状況に置かれても素直で優しい2人の姿に胸を打たれます。一方で、彼等が対処できる事柄に限界も見えて、彼等自身の無力感が伝わってくると共に、観ているこちらも自分が無力なことに気付かされます。そして本作は、さらに現実の厳しさを容赦なく突きつけてきます。それはあまりにも突然で、命の儚さを痛感させられます。本作を観ていると、大人の獰猛さ、社会の冷たさを実感します。直接何かできるわけではないにしても、まずは本作を観て、こういった現実に目を向けて、関心を持つことが必要ですね。
重い内容なので、デートのムードを盛り上げるということはありません。ただ、こういった社会問題に対してどんな考えを持っているかを話すことで、お互いの価値観が自然にわかると思います。それ以前に本作のようなテーマやストーリーに関心を持つかどうかで、ある程度相性がわかってしまうのかもしれません。
皆さんと同じ世代のトリとロキタが、自分達の力だけで異国で生活しているお話です。子どもだからといって守られることもなく、2人は過酷な状況で必死に生きています。自分ならどうするか考えながら観ると、すごく怖く感じる内容です。でも、こういった状況が実際にあることを知ると、日々の大切さに気付くきっかけになると思います。
『トリとロキタ』
2023年3月31日より全国順次公開
ビターズ・エンド
公式サイト
©LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – PROXIMUS – RTBF(Télévision belge)
Photos ©Christine Plenus
TEXT by Myson