REVIEW
ティーンエイジャーの息子のお父さん役を演じているサム・ワーシントン。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でもティーンエイジャーの父親を演じていましたが、彼ももうそういう年頃になったんだなとしみじみ思いながら本作を観ました。サム・ワーシントンが演じるライアンは、特殊部隊でスナイパーとして腕を振るいながらも、妻を亡くしてからは定職に就かず、息子のビリーと2人で暮らします。妻を亡くした当時は幼かったビリーもティーンエイジャーになり、父と息子の心の溝はどんどん開いていきます。そして、仕事も続かず家計も苦しいなか、ビリーが問題を起こし、窮地に追い込まれたライアンは、戦友の誘いで裏稼業に手を出してしまいます。
本作はライアンに起きる出来事そのものの解決に軸を置いて観ると、もしかしたら結末で「で?」となる可能性があります。実際に私がそうだったのですが(笑)、“トランスフュージョン”というタイトルの意味に軸を置いて解釈し直すと、本作でいいたかったであろう部分にはオチがついたといえそうです。“トランスフュージョン”は輸血の意味で、本作でもそのままの意味で出てきつつ、比喩的に父から息子に受け継がれる血筋の意味で“血”と捉えると、この結末でもしっくりくるような気がします。勇気とは何ぞやというのも、本作のストーリーの鍵となっているので、観る方それぞれに解釈をお楽しみください。
デート向き映画判定
夫婦の仲睦まじいシーンもありつつ、基本的には遺された夫が苦しみながら生きていくストーリーなので、一生を共に過ごそうと考えている相手と一緒に観ると、自分が先立つ側か遺される側かと想像してしまうかもしれません。そうなると、お互いに何だか一層尊い存在に思えてくるのではないでしょうか。とはいえ、「なんぼなんでもそれはあかんで」と思えるところもあるので、いろいろなバリエーションの感想が予想されます(笑)。そういう余地も含めて楽しめる相手とご覧ください。
キッズ&ティーン向き映画判定
本当はお互いを大事に思いながら、悲しい出来事を経て心が離れてしまった父と息子の物語です。なので、親子で観ると自分達を客観視できると同時に、普段は照れくさくて話せないことを話すきっかけにできるかもしれません。また、ビリーが学校の友人関係で悩む姿は皆さんにも身近に感じられるのではないでしょうか。本作に出てくるような友達は大切にすべきかどうかも、参考にできると思います。
『トランスフュージョン』
2024年5月10日より全国公開
PG-12
クロックワークス
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TEXT by Myson