REVIEW

トルーマン・カポーティ 真実のテープ

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』トルーマン・カポーティ

天才作家トルーマン・カポーティの半生を振り返るドキュメンタリー。映画『ティファニーで朝食を』『冷血』などの原作者として、また「冷血」を書き上げるまでを描いた、フィリップ・シーモア・ホフマン主演の映画『カポーティ』で彼を知った映画ファンも多いのではないでしょうか。
本ドキュメンタリーでは、彼の養女や友人、セレブ界に詳しい人物などが、あらゆる角度で彼について語っていて、彼の陰と陽の激しいコントラストが浮かび上がってきます。カポーティは、20世紀最高のパーティとして伝説となっている“黒と白の舞踏会”を主催したり、その突出したセンスの良さでファッションやアートの分野にも大きな影響を与えてきました。一方で、未完の小説「叶えられた祈り」の裏側で何が起こっていたかにフォーカスされると、不遇な人生を送ってきたカポーティが、華々しい社交界でたくさんのセレブに囲まれながら、実際はとても孤独で愛に飢えていた様子が伝わってきます。最終的に「叶えられた祈り」の一部を発表したことでセレブ界の多くの友人を失うのですが、他者から見て、成功に見えること、喜ばしいことがあっても、何も彼を満たすことができず、自分を絶対に裏切らない何かを探し続けるために、無謀なことに敢えて身を投じていたのかもしれないと、本作を観ていて感じました。だからこそ自虐的で、それが堂々たる態度として功を奏することもあれば、いきすぎて人を傷つけることになったのだと思いますが、いずれにしてもそれが彼の魅力を一層引き立てるものになっているのに、彼自身は愛として受け取れない点で、皮肉な運命に切なくなります。とにかく本作を観ると、もっとトルーマン・カポーティを知りたくなりますよ。

デート向き映画判定
映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』トルーマン・カポーティ

ロマンチックなムードになる要素はありませんが、カルチャーや社交界の話題など誰でも興味を持って観られる要素があります。小説が好きなカップルなら特に歴史に名を残す文豪の素顔を描いた本作を観ると、鑑賞後の会話でも盛り上がれるのではないでしょうか。トルーマン・カポーティのことをよく知らなくても、『ティファニーで朝食を』の原作者のドキュメンタリーというと、誘った相手も興味を持ってくれそうですよね。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』トルーマン・カポーティ

トルーマン・カポーティのことを知らずに観ても、本作がきっかけで彼に興味を持つこともありそうですが、ある程度社会的背景や文化的な話題が頭に入っていたほうが興味が増すので、高校生、大学生以上向けかなと思います。人の心理についていろいろと考えさせられるところも魅力の一つなので、自分のアイデンティティについて考え始めるお年頃になると、より感情移入できるのではないでしょうか。

映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』トルーマン・カポーティ

『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
2020年11月6日より全国順次公開
ミモザフィルムズ
公式サイト

© 2019, Hatch House Media Ltd.

TEXT by Myson


合わせて観たい関連作

『ティファニーで朝食を』

ティファニーで朝食を (字幕版)

『冷血』

冷血 (字幕版)

『カポーティ』

カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]

『名探偵登場』

トルーマン・カポーティが出演。

名探偵登場 (字幕版)

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

劇場版『トリリオンゲーム』今田美桜 今田美桜【ギャラリー/出演作一覧】

1997年3月5日生まれ。福岡県出身。

中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』オリジナルQUOカード(500円分) 2名様プレゼント

中国ドラマ『このロマンスはフィクションだから』オリジナルQUOカード(500円分) 3名様プレゼント

映画『ベイビーガール』ニコール・キッドマン/ハリス・ディキンソン ベイビーガール【レビュー】

シンプルに娯楽として楽しむ方、真面目に観る方、両方…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  2. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』
  3. 映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ
  4. 映画『ベイビーガール』ニコール・キッドマン/ハリス・ディキンソン
  5. 映画『エミリア・ペレス』ゾーイ・サルダナ/カルラ・ソフィア・ガスコン

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP