天才作家トルーマン・カポーティの半生を振り返るドキュメンタリー。映画『ティファニーで朝食を』『冷血』などの原作者として、また「冷血」を書き上げるまでを描いた、フィリップ・シーモア・ホフマン主演の映画『カポーティ』で彼を知った映画ファンも多いのではないでしょうか。
本ドキュメンタリーでは、彼の養女や友人、セレブ界に詳しい人物などが、あらゆる角度で彼について語っていて、彼の陰と陽の激しいコントラストが浮かび上がってきます。カポーティは、20世紀最高のパーティとして伝説となっている“黒と白の舞踏会”を主催したり、その突出したセンスの良さでファッションやアートの分野にも大きな影響を与えてきました。一方で、未完の小説「叶えられた祈り」の裏側で何が起こっていたかにフォーカスされると、不遇な人生を送ってきたカポーティが、華々しい社交界でたくさんのセレブに囲まれながら、実際はとても孤独で愛に飢えていた様子が伝わってきます。最終的に「叶えられた祈り」の一部を発表したことでセレブ界の多くの友人を失うのですが、他者から見て、成功に見えること、喜ばしいことがあっても、何も彼を満たすことができず、自分を絶対に裏切らない何かを探し続けるために、無謀なことに敢えて身を投じていたのかもしれないと、本作を観ていて感じました。だからこそ自虐的で、それが堂々たる態度として功を奏することもあれば、いきすぎて人を傷つけることになったのだと思いますが、いずれにしてもそれが彼の魅力を一層引き立てるものになっているのに、彼自身は愛として受け取れない点で、皮肉な運命に切なくなります。とにかく本作を観ると、もっとトルーマン・カポーティを知りたくなりますよ。
ロマンチックなムードになる要素はありませんが、カルチャーや社交界の話題など誰でも興味を持って観られる要素があります。小説が好きなカップルなら特に歴史に名を残す文豪の素顔を描いた本作を観ると、鑑賞後の会話でも盛り上がれるのではないでしょうか。トルーマン・カポーティのことをよく知らなくても、『ティファニーで朝食を』の原作者のドキュメンタリーというと、誘った相手も興味を持ってくれそうですよね。
トルーマン・カポーティのことを知らずに観ても、本作がきっかけで彼に興味を持つこともありそうですが、ある程度社会的背景や文化的な話題が頭に入っていたほうが興味が増すので、高校生、大学生以上向けかなと思います。人の心理についていろいろと考えさせられるところも魅力の一つなので、自分のアイデンティティについて考え始めるお年頃になると、より感情移入できるのではないでしょうか。
『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
2020年11月6日より全国順次公開
ミモザフィルムズ
公式サイト
© 2019, Hatch House Media Ltd.
TEXT by Myson
合わせて観たい関連作
『ティファニーで朝食を』
『冷血』
『カポーティ』
『名探偵登場』
トルーマン・カポーティが出演。