これは、大切なもののために必死になっている人間を描いた、心に染みる物語です。物語の舞台は、1969年の中国。とある町の映画館には住民達が殺到しています。でも、その映画館でかけられるはずのフィルムに問題が発生。それには、1人の少女と、1人の男が関わっています。彼等は必死にフィルムを奪い合うのですが、それぞれに抱える事情が徐々に明かされていきます。
2人の必死の攻防は、ふと一息ついたと思ったら状況が変わり、一段落ついたかと思えば、また別の問題が起き、そのフィルムは無事に上映されるのかとハラハラしながら見守ることになります。同時に、その二転三転する過程のなかで、お互いの事情が見えてきて、それぞれに心が揺れる状況に置かれることで、どんどんドラマチックな展開になっていきます。この人間描写がリアルで、何とも温かく、人間も捨てたものじゃないと感じさせてくれます。メインキャラクターの逃亡者(チャン・イー)とリウの娘(リウ・ハオツン)、ファン電影(ファン・ウェイ)の3人は皆、それぞれにすごく正直に生きていて、人間臭いところも魅力的です。
また、ロケーションを最大限に活かした砂漠のシーンは絵画的で美しく印象に残ります。ラストまで余すところなくホッコリさせてくれるストーリーと演出で、観終わった後は清々しい気持ちになれますよ。
ロマンチックな展開はありませんが、逆に気まずいシーンもないので、デートでも観やすいと思います。それぞれのキャラクターの背景に家族の物語があるので、観終わった後はお互いの家族の話をするのも良いでしょう。劇中で美味しそうな麺が出てくるので、そのまま食事に行く流れにしておくのもオススメです。
子どもと大人で観るポイントが異なるかもしれません。フィルムがどうなるのかというところはシンプルにハラハラドキドキしながら観られると思いますが、キャラクターの心情の細かな動きは、少し大きくなってから観るほうが感情移入しやすいのではないでしょうか。感覚的には中学生くらいになってから観るのが良いと思います。
『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』
2022年5月20日より全国公開
ツイン
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TEXT by Myson