REVIEW

私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』マリオン・コティヤール

物語の冒頭から、姉アリス(マリオン・コティヤール)と弟ルイ(メルヴィル・プポー)の異様な仲の悪さが印象付けられ、一気に物語に引き込まれます。そして、なぜそれほどまでお互いを避け続けるのか、謎に包まれたまま物語は展開します。一方で、憎み合っているはずのきょうだいの間に、愛があるようにも見えてきます。本作は、2人の間に流れる複雑な感情について、具体的な言葉で明らかにすることはないまでも、絶妙な空気感でリアルに表現しています。

ここからはあくまで私個人の解釈でネタバレを含みますので、鑑賞後にお読みください。

映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』マリオン・コティヤール

アリスとルイはある時まではとても仲が良かったこと、2人の間に明らかな変化があった出来事も明かされます。鍵はその出来事が2人の気持ちに何をもたらしたかです。彼等の両親の関係も鍵となります。両親の関係から想像して、2人はある時まで支え合っていたのでしょう。お互いがとても大切な存在で、芸術的な仕事をする2人はお互いに良い刺激を得ていたとも考えられます。それはきょうだいでありながら、少し恋人のような近さもあったかもしれません。でも、大人になると、きょうだいそれぞれの人生が見えてきます。お互いを手放すべき瞬間がやってきます。それがあの出来事だったのではないでしょうか。お互いの才能を妬んでいるようにも見えて、実はお互いの自立を確信した瞬間、ずっと一緒にはいられないと自覚した辛い瞬間だったのかもしれません。会えば、その複雑な感情と向き合わなければいけません。特別な思いがあるからこそ、2人は距離を置いたと同時に、避けられていることに寂しさと憎悪が膨らんだようにも見えます。
世の中には本当に仲の悪いきょうだいもいます。この2人も本当に仲が悪い可能性ももちろんあります。ただ、限られた2人のシーンには、愛情が溢れています。この見事なシーンを作った、マリオン・コティヤール、メルヴィル・プポーの名演、アルノー・デプレシャン監督の名演出をぜひご堪能ください。

デート向き映画判定
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』マリオン・コティヤール

観る方によって、アリスとルイの関係をどう捉えるかは違うでしょう。言葉では簡単に表せない2人の間の複雑な感情に似たものを感じた経験があっても、パートナーには説明づらいように思います。そうなると、ある意味ではデートで観るのは気まずいともいえます。1人でじっくり観るか、仲の良い幼馴染と観るのが良さそうですね。

キッズ&ティーン向き映画判定
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』マリオン・コティヤール/メルヴィル・プポー

大人になってから観るほうが、主人公達の心情にさまざまな想像を巡らせることができると思います。きょうだいのいるティーンの皆さんは、今の自分達とキャラクターを重ねてみて、数年後にまた観てみると、捉え方が変わるかもしれません。もし、今きょうだいと仲が悪ければ、話し合うのも難しいかもしれませんが、本作で自分達を客観視することで、少し心の硬さがほぐれそうです。

映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』マリオン・コティヤール

『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』
2023年9月15日より全国順次公開
PG-12
ムヴィオラ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©︎ 2022 Why Not Productions – Arte France Cinéma

TEXT by Myson

本ページの情報は2023年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP