“劇団た組”を主宰する加藤拓也のオリジナル脚本による監督デビュー作となる本作は、「不器用に、でも一生懸命“今”を生きるヒロインたち」をそれぞれの視点で映画化する“(not) HEROINE movies<ノット・ヒロイン・ムービーズ>”プロジェクトの第1弾として制作されました。
主人公の優美(木竜麻生)は、恋人の直哉(藤原季節)と仲の良い友人に囲まれて大学生活を楽しんでいますが、ある日妊娠していることが発覚し、優美は直哉に妊娠とある秘密を告げます。秘密については本編をご覧いただくとして、将来の夢に向かって努力している真っ最中だった2人に、妊娠という現実が重くのしかかっていく様子はとてもリアルです。観ているこちらまでヒヤヒヤしてしまう場面もあり、それだけリアルな姿が映し出されているのは、俳優陣の演技力と監督の手腕だと感じます。
また、現在と過去のシーンが行ったり来たりする映像も本作の見どころの1つで、最初は「今はどっち?」と少々混乱しますが、注意深く観ることでだんだんと慣れてきます。恋愛初期の楽しかった過去と、関係がこじれて大変な現在との対比は物語のアクセントにもなっていて、恋愛経験のある方ならどんな人でも共感できると思います。
優美と直哉の行動や言動には賛否がありそうですが、人間ドラマとしての見応えは十分なので、観た人それぞれの反応が気になります。人間の本質がよく見える作品なので、経験は違っても自分にも同じようなところがないか、振り返るきっかけにもなりそうです。
妊娠にまつわることや、同棲の“あるある”も詰まっているので、カップルにとって参考になる点がたくさんあります。ただ、付き合いたてのカップルにとっては少々重たい内容なので、1人か友人同士で観ることをオススメします。また、優美や直哉の行動から、その場の空気に流されてしまうことの怖さや、節度ある行動の大切さも学べるので、相手を見極める目を養いつつ、皆さんは本当に楽しい恋愛をしてくださいね。
キッズにとってはピンと来ない内容が多いと思うので、せめて中学生くらいになってから観てください。ティーンなら、恋愛をする人も増えてくると思うので、本作を観て恋愛の楽しい面と大変な面を疑似体験して欲しいと思います。望まない妊娠については、残念ながら現実にもあり得ることなので、未然に防ぐためにも反面教師として観てください。
『わたし達はおとな』
2022年6月10日より全国公開
PG-12
ラビットハウス
公式サイト
©2022「わたし達はおとな」製作委員会
TEXT by Shamy