毎度なるべく映画についての内容、情報を入れずに観るので、余計に「こんなお話だったのか〜」と打ちのめされました。最後まで観ると救いはありますが、主人公マーサ(ヴァネッサ・カービー)と夫のショーン(シャイア・ラブーフ)、そして彼女の家族がとても大きな悲しい出来事を経験し再生していく物語で、気持ちのやり場がない出来事でもあるので、観ているだけでも彼等の辛い気持ちを体感できます。最初のシーンをすごく丁寧にじっくり撮っているのが印象的ですが、それは後に続く重要な要素だったからだとわかります。そのシーンでのマーサとショーンのやり取りも、その後の2人の関係性の変化を際立たせていて、演出の妙も感じます。ヴァネッサ・カービーとシャイア・ラブーフの演技も見事で、それぞれ反応は違えども両者の思いに共感せずにはいられません。
人はとても辛い出来事に遭った時、いろいろな反応をし、そこに生き方が表れるのだなとつくづく思いました。早く前に進みたい気持ちで誰かのせいにしたくなる気持ちもわからなくもないですが、マーサのように自分に正直に生きていこうとする姿勢はとても素敵です。邦題は『私というパズル』、原題は“PIECES OF A WOMAN”ですが、女性はさまざまな要素から構成されているというのを改めて見つめ直すことができるストーリーです。ぜひ女性の皆さんに観て欲しい1作ですが、妊婦さんや妊活中の方はしばらく経って落ちついてから観ることをオススメします。
劇的にショックな出来事を経験した時に、カップルや夫婦で反応や対処の仕方が同じとは限らず、2人の関係も大きく変わってしまう可能性を感じる内容です。なので、お互いのことしか目に入らないほどアツアツのカップルが観ると、急に現実的な世界に引き戻されるかもしれません(苦笑)。ただ、今は平和な毎日を過ごせているならば、今こそこういう作品を一緒に観て、考え方を話し合うのも良さそうです。
本作は、15歳未満の未成年者の視聴は推奨されていないということもありますが、内容そのものが大人向けです。ただ、気持ちのやり場がない出来事に苦しむという経験は誰にでもあるし、家族同士のさまざまな思いが絡み合って関係がギクシャクするということも多少なりとも誰もが経験すると思います。それを客観視できる作品であり、改めて自分についても見つめ直すことができるストーリーなので、年齢を問わず観て得るものはあるでしょう。
『私というパズル』
2021年1月7日よりNetflixにて配信中
R-15+相当
公式サイト
Benjamin Loeb / Netflix
TEXT by Myson