加害者じゃないけど加害者扱いされてしまう微妙なラインに立たされた、事件の関係者が主人公の物語。この複雑な立場にいるからこそ、どうしようもできない状況に陥ってしまう様子が本当に恐ろしくて、誰の身の回りで起きてもおかしくないリアリティがあるので、余計に怖いです。また、主人公、市子の復讐劇でありながら、その背景には意外な人物の意外な感情が絡んでいて、復讐できるかどうかという論点だけで終わらないのも本作の魅力の一つ。主人公の誠実さと不誠実さの間での葛藤も、事柄が違えど誰もが日常で経験することで、感情を生々しく体感できる作品になっています。観る者の予想を何度もかわしていく脚本の上手さもさることながら、主演の筒井真理子の狂気的な演技もお見事です。見応えのある邦画を観たい方はぜひご覧ください。
主人公の復讐劇のなかに、男女関係を利用した内容も含まれていて、デートのムードが盛り上がるようなストーリーではありません(笑)。ただ自分達の関係をそのまま置きかえて観てしまうということは、あまりない設定だと思うので、映画を何度か一緒に観ている間柄なら、デートで観るのもありでしょう。でも、女性って怖いと思わせる部分はあるので、相手の警戒を強めてしまいそうな懸念がある場合は、デートでは観ずに、1人でじっくり観るか、お友達を誘いましょう。
ホラーの怖さではなく、現実社会でありそうなシチュエーションだからこそ怖いストーリーで、大人の関係の複雑さも描かれているので、キッズにはまだオススメしません。中学生以上なら、だんだんこういう人間関係のもつれも出てくると思うので、こういった立場に自分が置かれた時にどうすべきか、客観的に考える機会にするのも良いでしょう。
『よこがお』
2019年7月26日より全国公開
KADOKAWA
公式サイト
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TEXT by Myson