漫画家の中村光による人気コミックを福田雄一監督が吉沢亮を主演に迎えて実写映画化した『ブラックナイトパレード』。今回は本作でブラックサンタの鉄平役を演じた渡邊圭祐さんにお話を伺いました。無表情のキャラクターを演じる上で大変だったことや福田組に初参加してみた感想を直撃しました。
<PROFILE>
渡邊圭祐(わたなべ けいすけ):古平鉄平 役
1993 年 11 月 21 日生まれ。宮城県出身。2018 年から放送の『仮面ライダージオウ』で初のドラマ出演を飾り、以降ドラマ『推しの王子様』(2021)、『やんごとなき一族』(2022)、『チェイサーゲーム』(2022)、映画『ブレイブ-群⻘戦記-』(2021)、“鋼の錬金術師”シリーズ(2022)などに出演。『ブラックナイトパレード』では、まったく笑わないイケメン料理長の古平鉄平役を好演。2023年は映画『恋のいばら』(1月6日より全国公開)、『わたしの幸せな結婚』(3月17日より全国公開)にも出演。
原作の持つ大切な部分をきちんと理解して表現したいと思いました
シャミ:
脚本や原作を読んだ時に、物語や鉄平というキャラクターにどんな印象を受けましたか?
渡邊圭祐さん:
おもしろいというのが率直な感想でした。原作は現実と非現実のすごく絶妙なバランス感覚があり、その上コメディも描かれているので、テンポ良く読めて常に続きが気になりました。映画では福田雄一さんが監督することによって、さらにコメディ要素が強調されて、脚本の段階からおもしろかったです。鉄平というキャラクターに関しては、ものすごく深みのあるキャラクターで、裏もある人物だったので、やり甲斐のある役だと感じました。そして、今回は笑わないことがポイントだと思いました。
シャミ:
原作のある作品を実写として表現する上で気をつけた点などはありますか?
渡邊圭祐さん:
原作を実写化する上で、原作を無下にしてはいけないと思うんです。原作の世界観やキャラクターの個性みたいなものは必ず引き継ぎたいというのが大前提としてあります。それをやった上で自分が演じる意義や、実写になる意義を考えています。生身でやるからこそリアリティの部分や、ここでもっと遊べそうだなという部分が出てくるんです。だから原作の持つ大切な部分をきちんと理解して表現したいと思いました。
シャミ:
コメディ作品という点では、物語における鉄平の立ち位置や役割をどのよう捉えていましたか?
渡邊圭祐さん:
鉄平は、わざと無表情を貫いていたわけではく、そもそもコメディに対しての理解が遅いというか、おもしろいポイントで笑える人ではないんだと思います。笑いに対する感性が優れていないからこそ無表情なのですが、人に対する情がすごくあるキャラクターなんです。完成した作品を観ると、鉄平は観ている人の目線に1番近いキャラクターなのかなと感じたので、そういう役割を担っていたのかもしれません。だから、これからご覧になる方は鉄平を通して観ると、フラットな感覚で観られると思います。
シャミ:
周りに濃いキャラクターが多かったので、笑わず無表情に徹することが大変そうだなと感じたのですが、いかがでしたか?
渡邊圭祐さん:
周りがどんどん笑わせにくる方達ばかりだったので、そこで笑わないというのはものすごく難しかったです。もちろん笑わないことが狙いとしてありましたが、“笑わない鉄平を観て笑ってもらう”という狙いを僕自身が持ってしまうと、寒くなってしまう気がしたので、そうではない“笑わない”を作ろうと思いました。だから、狙いすぎず何も考えないでひたすら真顔で耐え忍ぶことを意識していました。
シャミ:
現場で思わず笑いたくなってしまったシーンもありましたか?
渡邊圭祐さん:
1番は帽子さんとのシーンで、相当おもしろかったです。あとは、皇帝(カイザー/中川大志)のシーンもそうですね。あれだけやっているのに笑わないので、変な気持ちになりました(笑)。でも、基本的にはどのシーンも笑いたかったですし、これぞ福田組だなと感じました。
シャミ:
福田組は今回が初ということですが、福田監督とお仕事をしてみていかがでしたか?
渡邊圭祐さん:
笑いに対する嗅覚が人一倍優れている方だと思いました。台本から映像にしていく上で、「ここで笑わせよう」「ここは遊べる」みたいなポイントを察知する能力がものすごく高くて、それは今回ご一緒して特に感じました。共演したキャストの方々もそうですが、「ここでしっかり笑わせにいく」ということをきちんと理解していて、監督から何も言われていなくてもできるので、波長がすごく合っている気がしました。
シャミ:
なるほど~。本作にはいろいろなキャストの方が出演していましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?他のキャストとの印象的なエピソードなどもあれば教えてください。
渡邊圭祐さん:
吉沢亮くん、橋本環奈さん、中川大志くんの3人は、福田組を何回も経験しているということもあり、すごく仲が良くて、現場の雰囲気やチームワークも良かったので、すごくやりやすかったです。ちょうど撮影期間中に格闘技の大きな大会があって、それを中川大志くんとスマホで一緒に観ながら、世紀の瞬間を2人で共有したということがありました(笑)。
シャミ:
本作の主人公は突然サンタクロースハウスで働くことになり、最初はなかなかモチベーションが上がらず馴染めない様子でした。普段渡邊さんが仕事に臨む時にモチベーションになっていることや、新しい環境に臨む時に工夫していることなどがあれば教えてください。
渡邊圭祐さん:
なるべく構えないことを意識しています。構えすぎて一歩引いてしまっても仕方がないと思うんです。それと、僕は新しい作品に入る時、事前に共演者の情報をある程度入れていくようにしています。過去の出演作や、誰と共演したことがあるのか、それから出身や趣味など、少しだけ頭に入れて会話の種にしています。
シャミ:
すごいですね!
渡邊圭祐さん:
この業界特有ですが、大抵の方は何かで観ていてすでに知っている方が多いじゃないですか。普通の新天地とは違って、「初めまして」「お名前は?」「ご出身は?」といった会話がないので、そういった基本情報は知らないと失礼にあたるパターンもあります。だから上手い具合に情報を頭に入れていくようにしています。
シャミ:
業界ならではですね。あと、渡邊さんご自身のお話も聞かせてください。事務所の公式サイトの趣味の箇所に映画鑑賞とあったのですが、映画は昔から好きでしたか?
渡邊圭祐さん:
昔から好きだったと思います。母と姉がディズニーやジブリの作品が好きだったので、ビデオでよく一緒に観ていました。
シャミ:
俳優というお仕事を意識されたのはいつ頃だったのでしょうか?
渡邊圭祐さん:
22歳くらいの時です。ワークショップに初めて参加させていただいて、芝居っておもしろいなと感じました。大人になってバカになれることはそう多くないですが、俳優ならできるし全力でぶつかっていけると感じました。
シャミ:
俳優のお仕事を続けられていて、1番やり甲斐を感じるのはどんな時ですか?
渡邊圭祐さん:
やっぱり観てくれた方の声を聞いた時でしょうか。自分がやったことに対して褒めたり、労ってくれたり、そういう反応をいただけた時に俳優をやっていて良かったと思います。
シャミ:
では、最後の質問です。これまでで1番影響を受けた作品、もしくは俳優や監督など人物がいらっしゃったら教えてください。
渡邊圭祐さん:
2021年の末に初めて舞台に立たせていただいたのですが、その経験は自分の中ですごく自信にもなったし糧になりました。俳優という仕事をする上での土台を作る作品になったと思いますし、その時に演出家の栗山民也さんとご一緒できたことはすごくありがたいことでした。原点に立ち返ってこれからもやっていこうと思えました。
シャミ:
ありがとうございました!
2022年12月23日取材 PHOTO&TEXT by Shamy
『ブラックナイトパレード』
2022年12月23日より全国公開中
監督・脚本:福田雄一
脚本:鎌田哲生
出演:吉沢亮/橋本環奈/中川大志/渡邊圭祐
配給:東宝
コンビニで3年間アルバイトをし、冴えない生活を送っていた三春。世間がクリスマスで盛り上がるなか、三春の前に突然黒いサンタ服を着た男が現れ、“サンタクロースハウス”という会社へ連れ去られてしまう。そこには、世界中から届く子ども達の手紙や山積みのプレゼント、そして黒いサンタ服を着た大勢のブラックサンタ達がいた…。
© 2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 © 中村光/集英社